『地を穿つ魔』 ブライアン・ラムレイ

納涼クトゥルー祭りその2

地を穿つ魔 <タイタス・クロウ・サーガ> (創元推理文庫)地を穿つ魔 <タイタス・クロウ・サーガ> (創元推理文庫)
(2006/01/11)
ブライアン・ラムレイ

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タイタス・クロウは失踪した考古学者とその甥の手記を調べるうちに、クトゥルーの眷属たちの陰謀を察知する。地底に住む邪神シャッド・メルが自身の個体を増やして世界中に展開させ、果てには大いなるクトゥルーを解放しようとしているのだ。タイタス・クロウと相方ド・マリニーは邪神と物心両面で戦い続けるうちに、クトゥルー眷属と戦う集団ウィルマース・ファウンデーションと接触することに成功して・・・


ブライアン・ラムレイによるタイタス・クロウ・サーガ第1巻
ダーレス路線の継承者ということで、邪神の攻撃をしのぐに留まらず、ウィルマース・ファウンデーション(WF)という組織を登場させることで“反撃”し“殲滅”するところまで話が進んでいく純粋な意味のホラー怪奇の世界から数歩飛び出して、怪物退治のファンタジーに大きく踏み込んでいるのだ
ところが、ホラーの風味を損なっているかというと、そうでもない
古典SF・ホラーのように個人の手記の形で語られているため、個人から見た怪物の恐怖が切実に描かれている。逆に大規模な怪物退治の話は伝聞調で書かれるので他人事のように感じられるほど
退治されたはずなのに、その感触が感じられない。この文章の濃淡が、クトゥルー眷属の怖さを上手く残しているのだ

しかし、だ
名状しがたい恐怖だったクトゥルー眷属が、クトゥルー古典の「科学化」によってどこまでの脅威か、量れてしまうのは少し寂しい
クトゥルーは人間の現代科学には「征服できない自然=超自然の存在」であったのに、古代魔術を科学に組み込むことによって「再征服」可能なものになってしまうのだ
マジックストーンである五芒星石の複製を大量生産してシャッド・メルへの武器とし、地下核実験を模した作戦で邪神の拠点を核攻撃するなど、唖然とするしかない
ダーレス路線が抱えていた性格がこうもモロに出るとは思わなかった。イギリスの作家なのに、割合アメリカ的な発想になっているのだ(WFの発祥がアメリカであり、ダーレスへのオマージュというところもあるのだろうか)
その一方で、ファンタジー小説として見たとき、アクション面がやや単調。大きく騒いだ割に、クトゥルー眷属に五芒星石を突きつけて終りな箇所が幾つかある
文章と展開の意外さで読み込んでしまうものの、もう少し工夫が欲しいところだ

こういう怪物退治しちゃうクトゥルーものは、読者を選ぶのは間違いない。クトゥルー神話に対する先入観がない方が純粋に楽しめるかもしれない
ラヴクラフトに愛着のある人には、ハリウッド的に倒されるクトゥルー眷属を笑ってあげる寛容さが必要だ。本書に出てくるクトゥルー眷属はエヴァの使徒みたいなものなのだ
だが、クトゥルー側もやられぱなしでもあるまい。このまま人間に狩られる一方では、クトゥルーの名がすたろう(笑)
ラストは逆襲を匂わす手記で締めている。次巻以降のクトゥルーの反撃に期待だ
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