『孤笛のかなた』 上橋菜穂子

盆休み中は予定以上に本が読めたなあ
ジャンルは相変わらずバラバラだが

狐笛のかなた (新潮文庫)狐笛のかなた (新潮文庫)
(2006/11)
上橋 菜穂子

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小夜は12歳のとき、一匹の狐を助ける。猟犬から逃れるため、森に姿を隠そうとして謎の屋敷を見つけてしまう。屋敷には、呪いを遠ざけるため匿われていた少年小春丸がいた。その夜をきっかけに小夜と小春丸は仲良くなるが、それぞれの事情から別れることになる。数年後、養母が死にひとりぼっちになった小夜だったが、彼女の周囲を助けられた霊孤・野火が見守っていたのであった・・・

呪者の娘小夜、霊孤・野火、領主の隠し子小春丸を中心に、領主とそれに使える呪者同士の暗闘を描いた大河ファンタジー。舞台は東アジア全般を意識した守り人シリーズとは違い、“武士の時代”の日本をモデルにした純和製の作品世界
小夜の母親は有路氏に仕え殺された呪者であり、小夜も呪者の素養を持つがゆえに政争に巻き込まれ・・・という陰惨な展開だが、登場するキャラクターはほとんど情に脆くいい奴ばかり。意志を曲げない主人公たちをぎりぎりのところで救っていく
残忍な歴史を持つ作品空間を、人情味溢れる物語が暖かくしてくれるのだ
抱えた問題が大きい分、野火が持っている能力以上に活躍させてしまったところはあるが、その代償があの幻想的なラストにつながることでバランスがとれている
守り人シリーズから独立した世界観なので、シリーズの習作的な位置にある作品とみていたが全く違った。悲壮と人情が入り混じる秀逸な大河ドラマなのだ

守り人シリーズでも触れたが、強調したいのはアクションシーン
世界観的に呪術と武闘が入り乱れた活劇となり、ついつい説明文を置きたくなるところだが、作者はシンプルに状況を触れるだけで突っ切っていく。描写に集中してスピード感を落とさないのだ
なおかつ短い言葉の描写で読者を納得させてしまうのだから凄い。低年齢層相手の童話で培われた文章力なのであろうか
そこにたどり着くまでの文章の立て方で、世界観を読者に上手く馴染ませているのも大きい
解説に朝日新聞の鼎談の一部が載っていた

上橋 私も没頭派です。私は書く方だから、なりきってないと次の場面が浮かんでこない。
金原 じゃあ活劇のところで暴れ回っている?
上橋 たいへんですよ。やくざ映画を見ているときのおっさんみたいになっている(笑)(p390-391)

やっぱ、活劇が好きだったんだ(笑)。好きこそものの上手なれか

読んでいる時は、山本周五郎『樅の木は残った』を思い出した
こちらは自己犠牲というよりも、ぎりぎりの知恵で政治的に解決しているが、やはり犠牲がないわけではない
魅力的なファンタジーも甘い友情も、峻烈な背景や障害があってこそ映えるのだ
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