『海の都の物語』 3~4巻 塩野七生

ヴェネツィア共和国の元首は任期が終身
日本の首相が終身ならば・・・国が滅ぶか(笑)

海の都の物語〈3〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)海の都の物語〈3〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)
(2009/05/28)
塩野 七生

商品詳細を見る

海の都の物語〈4〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)海の都の物語〈4〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)
(2009/06/27)
塩野 七生

商品詳細を見る


三巻ではヴァネツィア最大のライバルであったジェノヴァを取り上げる
ヴェネツィアが東地中海の利権を独占されたものの、ジェノヴァ海軍の戦闘力は凄まじく、商船への巧みな襲撃を重ねてヴェネツィアに打撃を与えていく。1379年には、ハンガリー、ミラノと組んで三方からヴェネツィアを包囲し、滅亡まであと一歩のところまで追い詰めた
ジェノヴァとの戦いでは、ヴェネツィアの短所、長所が浮き彫りになる
まず、短所は合議制の伝統から軍事作戦についてすら、司令官の独裁を認めなかったこと。実際、ピサーニという優れた提督がいたにも関わらず、その意見が採用されず致命的ともいえる敗戦を喫している
初期でも、商船の護衛を優先したがゆえにジェノヴァ海軍に良いように略奪される局面もあり、伝統を重んじる保守的な気風が戦時に後手を踏ませている
長所は、本土決戦で見せた団結力だ。すべての市民がヴェネツィアを守るために動員され、挙国一致の体制がとられた。ヴェネツィアには、古代ローマに匹敵するような「国家」としての組織力を持っていたのだ
この保守性と団結力は表裏一体で、どちらか一つを残せるというものでもないだろう
ジェノヴァがヴェネツィアを凌げなかったのは、こうした団結力を持ち得なかったゆえで、優勢な局面でもお決まりの御家騒動が起こって覇権のチャンスを何度も逃している
ナナミンは「個人」が突出しすぎたと指摘するが、まあこれが当時の一般的な交易都市の姿なのだろう
(後半にヴェネツィアの女たちについて紹介されていて面白い。ただ、ヴェネツィアの女が政治に口出さないのが良かったと言われても、他の国の人も大概そうだろうと・・・)

4巻に次代のライヴァルとしてオスマントルコが出てくる
しかし、果たして大陸国家のオスマントルコにとって、海洋国家ヴェネツィアがライバルと言えたかというとどうだろう
作者も好敵手として取りあげるのにとまどいを見せている。最初のトルコの海軍博物館へ行くくだりを読むと、当初の構想が瓦解したことにたいそうご立腹のご様子だ(笑)
それを引きずったのか、その後のオスマントルコの取り上げ方は、完全なヴェネツィア視点でその行動を「非合理的」なものと評していく。もう、ルネサンスを理想化したオリエンタリズム丸出しというか
まさかコンスタンティノープルを攻略した英雄マホメッド2世をアホぼん気味に扱うとは思わなかった(『コンスタンティノープルの陥落』と比較すると驚くよ)
いや、国家の規模を最大限拡張していくことで敵を無くすということは、アジア的帝国の力学としてわりあい妥当なものだと思うんですけど・・・
まあ、地味なヴェネツィアを主人公に仕立てるために、オスマントルコを貶す必要があるわけで、演出的には間違いなく正解だろう。ヴェネツィアにはなかなか華のある「英雄」は出て来てくれないのだ
同じ作家であっても、視点が異なるとこうまで変わるものかと感心した。ナナミンの本性は、史家というよりも「作家なのだ


次巻 『海の都の物語』5~6巻
前巻 『海の都の物語』1~2巻
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

コメント

こんばんは
ナナミンが、史家というより作家というのは、同感ですね。
だいぶ主観が入ってる気がします。
司馬遼太郎に似てる気がするのは気のせいかな?
Re: こんばんは
現在の立ち位置などは、保守系の知識人ということで、かつての司馬遼太郎に近いですかねえ
司馬ファンで『ローマ人の物語』をスルーした人は少ないでしょう

ただ、好悪丸出しのスタイルなので、司馬のようなバランス感覚には欠けています
そこが可愛いんですけどね(笑)

コメントの投稿

非公開コメント


(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
カテゴリ
SF (24)
RSSリンクの表示
リンク
FC2 Blog Ranking
ランキング
アクセスアップ!?
検索フォーム
はてな
この日記のはてなブックマーク数
タグランキング

サイドバー背後固定表示サンプル

サイドバーの背後(下部)に固定表示して、スペースを有効活用できます。(ie6は非対応で固定されません。)

広告を固定表示させる場合、それぞれの規約に抵触しないようご注意ください。

テンプレートを編集すれば、この文章を消去できます。