『海の都の物語』 1巻~2巻 塩野七生

『リーンの翼』(旧)より、こっちが早く読み進んでしまった

海の都の物語〈1〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)海の都の物語〈1〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)
(2009/05/28)
塩野 七生

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海の都の物語〈2〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)海の都の物語〈2〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)
(2009/05/28)
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ローマ帝国崩壊からナポレオンに征服されるまで生きのびた、“千年共和国”ヴェネツィアの通史
一巻はヴェネツィア誕生から“地中海の覇者”となる第4次十字軍まで。2巻は十字軍国家崩壊後の混迷期と共和国の国体を決定づける改革とそれに対する反政府運動を扱う
ヴェネツィア共和国に特徴づけられるのは、何よりも旺盛な団結力
ゲルマンの侵攻から干潟に避難したことから始まって、人の住めないところを自力で切り開いた歴史は、強い共同体意識を生み出す。そして天然資源が皆無なことから、早くから東地中海での交易に特化し、簿記や航海技術などで他国の大きな差をつけることに成功した
そうしてつけた力を分散させないことがヴェネツィアの強みで、共和国が一体となって交易の特権を目指し、伝統ある商家は貴族となって共同体の保全に力を尽くす。文字どおり、皆が一人のために一人が皆のために支え合う
そして、このバランスを維持するために時には獲得した領土を捨てることは厭わない
著者も指摘するように、ヴェネツィアは単に都市国家であるだけではなく、一つの会社のごとしなのだ。商人たちは独立心を持ちつつも、会社員のように共同体の伝統に沿って行動する
ナナミンは商社に喩えたが、僕は大手の広告代理店を想像した

ヴェネツィアと高度成長期の日本を比較すると面白い
ヴェネツィアは中継貿易、日本は加工貿易で経済を成り立たせていて、内輪の対立は薄い
主な喧嘩を外でやっている分、内ではともに伝統と和を重んじる。ヴェネツィアの意志決定は必ず複数者の談合で決まる!
またヴェネツィアが直接住民の声を聞く市民集会から、世襲貴族と官僚による議会制に移行してから政情が安定し、全盛期を迎えるというから面白い。政治と経済のプロ化が効率を良くしたというのだ
こうなると権力を奪われた市民が怒りそうだが、それで反乱が起こらないのがヴェネツィア。おそらくは元が同じ商人であり、市民と貴族の間に他国ほど階級差がなかったからだろう。階級社会でないところも日本との共通点だ
唯一絶対の違いは、市民の国防意識が高いところだろうか。まあ、時代と状況、必要性が大きく違うわけだけど・・・

2巻まで読んだところ、ナナミンの史観は『ローマ人の物語』となんら変わりがないことに驚く。この頃の延長線に『ローマ人の物語』があるというぐらい一貫性がある
ヴェネツィアのバランスを愛でるところは、ローマのそれを愛でるのと変わらない。イデオロギーより俗っぽくても実質を重んじる保守志向だ
彼女のローマ愛というのは、ルネサンス人が夢見た古代ローマの栄光そのままなのかもしれない。実際の古代ローマは周辺の文明により野蛮であっても、キリスト教社会のルネサンス人にとって見れば古代ローマは光り輝いているのである
『ローマ人の物語』「ルネサンス人から見たローマ人の物語」だと考えると分かりやすい

次巻 『海の都の物語』3~4巻
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コメント

こんばんは
自分もだいぶ前に読みました。
印象に残ったのは、ヴェネチア人の徹底したリアリズム。
今の日本の政治家も見習ってほしいものです。
Re: こんばんは
今の現政権は怪しげな友愛ですが、自民党政権はわりあいリアリズムだったと思うんですよねえ

ヴェネツィアは交易に依存した国家ですから、事件一つでひっくり返る脆弱さを持っているわけで、政治エリートの緊張感が全く違うのでしょう
日本の政治家の大半はリアリズムで動こうとしているはずですが、リアルに対する感度が鈍っているのだと思います
それまで日本が恵まれていた時代が長かったからでしょうが・・・

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