『ローマ人の物語 34 迷走する帝国(下)』

おっ、親方様が亡くなられた(泣

ローマ人の物語〈34〉迷走する帝国〈下〉 (新潮文庫 し 12-84)ローマ人の物語〈34〉迷走する帝国〈下〉 (新潮文庫 し 12-84)
(2008/08/28)
塩野 七生

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ガリアヌスの治世からディオクレティアヌスの登極まで
ヴァレリアヌスを捕らえられたペルシアが反攻を開始するが、ドナウ戦線に蛮族が襲来したためにガリアヌスは対抗できない
そこで、ガリアヌスはパルミアの私兵を率いる名将オデナトゥスを司令官に任命。ペルシア戦線での広範な指揮権を任せる。これをきっかけにパルミア王国は勢力を拡大し、オデナトゥスの妻ゼノビアが夫の死後に実権を握るとエジプトすら傘下に収める一大勢力となる
その一方で、ガリアヌスに不安を覚えるガリアの軍団が独立し、ローマの政体そのままに「ガリア帝国」を建国する
東西にまたがる大帝国は一時的であれ、三分されることになった
騎兵隊出身の皇帝アウレリアヌスが統一するまで13年、この分裂は続いた

ガリアヌスは未曾有の危機に至って、一つの法律を成立させる
「元老院」と「軍隊」を完全分離させる法律で、元老院議員をローマ軍の将官クラスから排除するもの
多くの史家が非難している法律であり、著者も軍事と政治の乖離を招き、非ローマ化に拍車をかけたものとしている。元老院の仕事が直接軍事に役立つものではないが、軍政両面に携わる人間が育成できないために、良質の政治家を生み出せなくなったというのだ
「軍隊」出身者が「元老院」になれないのかは分からない。ただその後を見れば、両者がそれぞれ独立した階級になってしまったことが、帝国の指導層の弱体につながったのは確かなようだ
皇帝が無理強いしたわけでもない。元老院議員自身がそれを支持した。彼ら自らは“お公家さん化”を望んだのだ
実権がないからって、「元老院」がそれやっちゃローマもおしまいだ

最後の一章を使って取上げているのが、キリスト教の普及
ネロの頃にはローマにキリスト教が伝わっていたのに、なぜ300年立たないと広まらなかったのか。この疑問に対し、著者はこの300年の間に、キリスト教の側が多神教のローマで受け入れやすいように変化したのではないかと考える
キリスト教は厳格には現世、「ローマ帝国」の社会を否定し、その後に来る「神の王国」を待望する。だから、ローマ帝国の市民としての義務を果たすべきではないとしていた
その結果、歴代皇帝にスケープゴートに使われ、ヴァレリアヌスの代には棄教か死かの“踏み絵”を踏まされた(文字通りの踏み絵ではない)
そこで、ローマ帝国に住むという現実を受け入れ、生きている内はその権威を尊ぶという軌道修正を行ったのではないか。後年のカトリック教会が聖人列伝や天使たちを使って多神教の要素を持ち込んだように、共存可能なスタイルに変えたというのだ
これはかなり説得力がある
ただ、キリスト教とローマ帝国が穏当に共存可能となると、「キリスト教の普及=ローマの滅亡」とはならなくなる

では何がローマ帝国の精神に致命傷を負わせたのか。次巻以降はラストスパートに入るし、ナナミンの結論が楽しみ
彼女のモチベーションはともかく(笑)、衰亡史の時代は面白いぞ


本巻でも多くの皇帝が不慮の死を遂げた

アウレリアヌス・・・秘書エロスが皇帝の粛清を示唆して将官とともに暗殺(275年)
タキトゥス・・・五ヶ月の空位期間の後、即位するも75歳の高齢による自然死(276年)
プロブス・・・農作業に嫌気が差した軍団兵に足下の塔を崩されて落下死(282年)
カルス・・・遠征先で雷に打たれる(283年)

アウレリアヌスは分裂した帝国を一気に統一した名将だ。それがこうも簡単に殺されるのが分からない
皇帝に対する敬意というものが、まるでないのだ
プロブス、カルスに至ってはまるでコントである。それでも本人たちはなかなかの実績を残していて、凡将ではない
タキトゥスは即位する経緯が酷い。皇帝を名乗る者が五ヶ月いなかったなんて、暗黒過ぎて監督のなり手がいないプロ野球チームみたいじゃないか(往年のタイガースでんがな)
現実の政治がここまで暗黒になりませんように(祈


次巻 『ローマ人の物語 35 最後の努力(上)』
前巻 『ローマ人の物語 33 迷走する帝国(中)』
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