『全体主義の起源 1 反ユダヤ主義』

やっと読み終えた
買う時は値段に愕然としたが、読んでみて納得
濃い。普通の本の何十倍も濃い内容なのだ

全体主義の起原 1 新装版全体主義の起原 1 新装版
(1981/07)
ハナ・アーレント大久保 和郎

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本書は、どうしてナチズムが生まれホロコーストに到ったのか、歴史を遡ってその淵源をその醸成を探る思索の書
第1巻はナチズムのイデオロギーの主柱となった「反ユダヤ主義」についてだ
大きく四章に分かれて構成され、第一章は「反ユダヤ主義」そのものを、第二章にユダヤ人と国家の関係について、第三章に実際のユダヤ人と社会について、第四章に著者がナチの先駆とする「ドレフュス事件」について取り上げる

第一章に「反ユダヤ主義」についての基本的な認識がまとめてある
箇条書きでざっくり書くと

・中世からの「ユダヤ人迫害」と近代の「反ユダヤ主義」は別物
・「反ユダヤ主義」は国民国家が完成、限界に達した時に「民族主義」とともに吹き出た
・「反ユダヤ主義」はナショナリズムではなく、(ヨーロッパ内で)インターナショナルな広がりを持っていた
・「反ユダヤ主義」はユダヤ人が国家とのつながりを失った時に絶頂に達した

大筋は第一章で全て語られていると言っていい
しかし、各論、各論で深いんだなあ

第二章ではユダヤ人と国家との関係がまとめられている
中世、宗教上の優位(!)からユダヤ人は金融業に長けていた。中世から近代の変わり目には、ハプスブルグ家などの多くの王国御用ユダヤ人を抱え、財政を取り仕切った
国民国家の時代を迎え、中世以来の特権が失ったユダヤ人の多くは金貸しを廃業する。そのなか、一部のユダヤ人は国民国家の財政を支えるため、国家から特権を認められ銀行家としての立場を確保する
しかし、帝国主義の時代に到るとユダヤ人の必要性がゆらぎ没落する。結局、生き残ったのは有名なロスチャイルドのみとなった
国内の構成員は同権が基本となる国民国家でもユダヤ人は同権に成りきれず、国家側もユダヤ人の資本を必要としてある程度の特権を認めるという宙ぶらりんの立場に残った
こうした国家との関係が国家に不満を持つ者からは癒着と捉えられ、「反ユダヤ主義」の傍証とされてしまったようなのだ
第三章にはこうした時代を生きた実際のユダヤ人の姿を追っている
ユダヤ人の共同体の変遷、上流階級に迎えられた例外ユダヤ人の盛衰も事細かに語られて、なんとも濃い

第四章は反ユダヤ主義がもたらした「ドレフュス事件」の顛末だ
ドレフュスはユダヤ人として初めてフランスの参謀本部に入った情報将校で、偽の証拠をでっちあげられドイツのスパイとして裁きを受けることになる
著者はこの事件をナチスの魁けと見る。その理由は・・・

・「反ユダヤ主義」が政治運動に動員されたこと
・民衆ならぬ“モッブ”を組織化し公然とテロを行ったこと
・“モッブ”の指導者に世間が英雄視したこと

事件は軍部の命令で偽造した将校の自白と自殺、万国博覧会開催のための国際世論への配慮から一気に収束に向かう
しかし、フランス第三共和政は国家体制の欠陥を修正できないまま、国民国家の伝統だけを引き継いで二度の世界大戦を迎えることになる
事件の背後にはカトリックの勢力が関わっていて、その中心たるイエズス会とナチスの比較が面白い

正直、書かれていることの何割も理解できたか怪しい
ちょっと気になったところをノートに書いてみるか・・・


第三章に上流社会に招かれた「例外ユダヤ人」たちの書かれているが、面白いのがディズレイリの話だ
「例外ユダヤ人」の多くは貴族たちに一時的もてはやされて捨てられてしまうのだが、この男だけは違った
強烈なユダヤ民族主義者たることでイギリスの貴族たちと渡り合い大英帝国の首相(!)にまで登りつめてしまう
この男のおかしいのは、世界各地にユダヤの秘密結社があると信じていたことだ
その妄想を彼は何冊かの本にしているのだが、それはもう当時から現在にいたる反ユダヤ主義的な陰謀論そのまま(笑)
今で言う「次の覇権国家は中国だと、ロスチャイルドが決めた」というレベルの話を本気で信じちゃっているのだ
18~19世紀は革命の世紀。革命党、泡沫的なサークル含めて秘密結社自体は珍しくない
今でこそオカルト、オカルトと笑えるけど、当時としては常識に近い話だったのだろうか
冷戦時代、東側を理想化していた人が相当数いたことを考えると笑えない話かも

10’1/22 修正

次巻 『全体主義の起源 2 帝国主義』
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