『海狼伝』 白石一郎

だいぶ前に買って積み置きされていた本。1987年直木賞作品

海狼伝 (文春文庫)海狼伝 (文春文庫)
(1990/04)
白石 一郎

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対馬で育った少年笛太郎は玄界灘を渡るジャンクを魅せられた。父が海賊という出自持つ彼は導かれるようにジャンクの持ち主である“宣略将軍”に従うことになる。そこで笛太郎は侍大将加兵衛、朝鮮人の美少女剣士麗花、捕虜から取り立てられた明国人雷三郎と出会う
しかし、村上水軍との交戦で笛太郎は雷三郎とともに敵方に囚われてしまって・・・
笛太郎視点から見ると彼の父捜し、父越えの物語
が、そこに到るまでは笛太郎本人の意志というより過酷な状況に振り回され続けるので、どこでどう転ぶかが読めない。とても上手い構成と展開なのだ
まず圧倒されるのは、リアルな海賊たちの生活様式だろう。貧しい島に住む彼らに捕虜を養う食料はない。奴隷として裁けるメドが立たないなら、容赦なく海にたたき落とす!
その一方、村上水軍は商船に帆別銭という関税で取り立てて稼ぐ。笛太郎は両者の手法に大いに考えさせられることになる。村上水軍の方が合理的に見えるが、これにも笛太郎が批判的なのが面白い
また、海や船に関する説明、描写はピカ一で、海戦も見てきたかのごとく。特にラストの海戦はクライマックスに相応しい渾身の筆致で唸らされた。しかもそこには序盤の何気ない伏線も活かされていたり
村上水軍vs織田鉄甲船の対決を省略されたのは最後盛り上げるためだったんだなあ

読んでいて意識させられるのは、海の世界に国境はないということ
対馬の海賊“宣略将軍”は日本人なのだが、一度朝鮮王朝に降って官職をもらってたりするし、、対馬の宗氏もまた朝鮮王朝に臣下の礼をとってお米もらったりしている
またそうしながら、倭寇として明国へ略奪に出かけたり・・・
もっとも実際の倭寇のほとんどは明国人自身であり、彼らによる反政府活動であるとも語られる。だから、向こうの海賊ともなんら問題なく幅広い交易と交流が行われる。そして海の向こうで活躍する日本人海賊の存在も噂される
海賊は合理的なビジネスマンでもあって、言葉の壁すら存在しないかのようだ

時代考証、船に対する造詣の深さにも唸るのだが、小説としてもかなり面白い
それぞれのキャラクターが立っているのである
笛太郎は主人公だが、潮読み、操船が本領で他は得意ではない。あくまで等身大の人間であり、運命やしがらみの中で苦労していく
そんな凡人の彼を支えるのが、無骨な中国人雷三郎に商売上手の上司小金吾各々長所と短所がはっきりしていて、お互いが補い合いながら夢に向かって突き進む姿は非常に微笑ましい
また、女性とのロマンスもちゃんと用意されていて、エンタメとして行き届いている。一番イカしているのは女剣士麗花ちゃん。続編ではどう絡んでくるかなあ
そして、何よりも悪役の存在感がいい。特に峻烈な老海賊“宣略将軍”は「悪業は天意」と宣うまさに大悪党。カイジの安藤和尊会長のような達観した価値観をもって笛太郎に立ちはだかる
果たして笛太郎は将軍を越える海賊のあり方を見つけられるのか。それは続編の『海王伝』に試される
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