愛した男が極道だった……元極妻が明かすヤクザの日常
回り回ってフィクションに見えてしまう内容だった
子供が幼稚園に通う際には、なるべく周囲に極妻だとバレないようにしていたが、抗争中の場合はそうもいかず、黒いリムジンで送り迎え。護衛の黒服が並ぶ様に、園長に「抗争中なので」と断りを入れる場面は、漫画でもないだろうという(笑)
宴会で盛り上がる極妻の会、子供の運動会で張り切り、UFOキャッチャーにはまる組員など、かなり人間臭く面白いエピソードが並ぶ
台湾のマフィアが日本のヤクザの影響か、グラサンの黒服で整列して出迎えるとか、映画のような光景がわりとあることに驚く
強調されるのは、組全体がファミリーだということ。マフィアが血縁、人種という血によるなら、日本のヤクザは組長を中心とした「家」であり、擬似的な親子関係を結ぶ
構成員はどんなに年を取っていても「若い衆」と言われ、男性中心の社会ながら“姐さん”は組長に代わって私的な面倒は見る
ヤクザの出自は博徒、テキヤと言われるが、中世近世の「若衆宿」の性質も継いでいるように思える
初出の単行本が2010年で、子供の年齢から書かれている内容は90年代後半からゼロ年代と思しく、暴対法の後でもわりと古い秩序が生き残っていたのだ
著者によると、極道にも段階があるようで、組長、盛り場の顔役クラスになると汚い商売に直接手を出さない。構成員も覚醒剤には手を出すのはご法度だし、堅気、特に女性への暴力には著者も手厳しい
しかし、ヤクの売人からの上納金は組織に流れていて、周囲をヤクから守りつつ、世間の薬物汚染に加担しているという矛盾は残る
平和な日常が取り上げられる本書では、極妻を狙う詐欺、他の組織からの盗聴、抗争中の引きこもりなど、一般人なら感じることもない過酷な環境であり、著者は最後は消耗して夫との離婚に踏み切る
親子の仲といっても、ヤクザは基本が個人事業主であり、どこまでも面倒見てくれるわけでもない。自ら命を断つ構成員も少なくなく、社会にとっても本人にとっても良くない存在なのだが、代わりに半グレ集団や外国人グループが浮上するので、にんともかんとも