『実録・アメリカ超能力部隊』 ジョン・ロンスン

超能力を使って社会の敵を倒すなんてヒーロー物は世間で溢れているが、現実の軍隊にもそれは存在していた!

実録・アメリカ超能力部隊 (文春文庫)実録・アメリカ超能力部隊 (文春文庫)
(2007/05)
ジョン ロンスン

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ことはベトナム戦争の敗戦から始まる。徴兵制の廃止を余儀なくされ、威信が地に墜ちて落胆する軍人たちに、ニューエイジ運動の影響を受けたある将校が突飛な構想を聞かせる。それも「敵を傷つけることのない平和の軍隊」。「ラブ&ピース」の精神をもった軍隊なのだ!
平時であれば受け付けられないトンデモ話だが、敗戦の悪夢を引きずる上層部には魅力的に映った。いわば現実逃避的に計画は始まったのだが・・・
この本はそうした「平和の軍隊」の戦士たちの軌跡を追ったもの。実際に超能力の訓練を受けた男たちの話は荒唐無稽であり、そのキャラクターも香ばしくイカれた人ばかり
一例を挙げると

グレン・ホイートンは椅子の上で身を乗り出した。「きみはこの家の玄関から入って、裏にまでやってきたね。さて、この家には椅子がいくつある?」
沈黙がおとずれた。
「たぶんきみはわたしの家に椅子がいくつあるか答えられないだろう」とグレン。
わたしはあたりを見まわしはじめた。
スーパー兵士に見る必要はない」と彼はいった。「なにもしなくてもわかるんだ」
スーパー兵士ですって?」とわたしはたずねた。
スーパー兵士さ」とグレンはいった。「<ジェダイの戦士>だ。彼にはあらゆる照明の位置がわかる。あらゆるコンセントの位置がわかる。多くの人間は観察力がとぼしいんだ。自分のまわりで実際に起きていることをちっともわかっていない」
<ジェダイの戦士>とはどういう連中です?」
「きみの前に一人いるよ」とグレンは答えた。(p23~24)


ちょっ、待てぇぇぇ(笑)
と、こんなトホホな人たちばかりなのだが、本人たちはいたって大真面目
ユリ・ゲラーが工作活動に関わっているとか、壁を通り抜けられると思っている将軍とか、山羊を睨み殺したとか、もう、トンでもないネタのオンパレードなのだ
が、途中までと学会的な視点の本だと思っていたら、中盤以降に話は風雲急を告げる
この超能力部隊が試行錯誤されて生み出された技術が、実はテロリストやイラク戦争の捕虜たちの尋問に使われていたというのだ
歌で平和にするというマクロスな構想が、捕虜虐待に使われるという現実もさることながら、このことを取り上げたメディアがただのネタ話としか流さないことには愕然とした
最後、過去にCIAが起こした事件にも話は移る。この本はアメリカの、それこそ<暗黒面>を取り上げたものだったのだ・・・

著者は気鋭の調査ジャーナリストながら、トンデモネタに関しても冷静にそしてユーモアたっぷりに書く。その距離感が絶妙で、これはよく出来た小説なのではないかと思えるほど。話の奥がなかなか見えないので、前に読んだミステリーと同じくらいの緊迫感があった
ここまでシリアスとユーモアのある読み物ってフィクションでもそうはない
全てにちゃんとした物証のある話ではなく、真贋を読者に委ねられている部分が大きいが、なかなか衝撃的なルポだ


5/24追記:
インターネットが軍事技術からの転用というのも良く知られた話だが、それも軍部の「ラブ&ピース」路線から来ているらしい
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