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『ベスト&ブライテスト』 下巻 デイヴィッド・ハルバースタム

前巻を読んだのが、4年以上前とか




ベトナムの泥沼化を招いた指導者層の決断を描くレポートの最終巻
タイトルからして反戦運動に話が移ると思いきや、続いてジョンソン政権の文官、軍人の動きを追うものだった。"賢者”たちの判断がテーマなのだ
ジョンソン政権はダラスの暗殺後に成立したこともあって、ケネディ政権の主要な閣僚、国防長官ロバート・マクナマラ、国務長官ディーン・ラスク、国務次官ジョージ・ポール、大統領補佐官ジョージ・バンディが留任し、引き続いてベトナム問題の解決に取り組んだ
下巻では、ケネディ時代から始まった軍事顧問団の派遣が、北ベトナムへの大規模な空爆と戦闘部隊の派兵へ拡大した責任を明らかにしていく


1.「偉大な社会」とベトナム介入の葛藤

リンドン・ジョンソン大統領は、フランクリン・ルーズベルトら過去の大政治家たちを意識しており、公民権の拡大と貧困の撲滅を目指した「偉大な社会」をスローガンに掲げていた
ケネディから引き継いだ"賢者”たち、東部のエスタブリッシュメントたちとは違い、テキサスの田舎者というコンプレックス(実際には政治家の息子だが)を持っていて、閣僚と折り合いが良かったわけでもない
彼にとっての第一目標は、政治家としての事績を残すための「偉大な社会」の実現であり、ベトナム戦争は予算的にも脚を引っ張る存在といえた
しかし党内の保守派として、反共の姿勢を崩すわけにもいかず、あくまで戦争の予算規模を限定して、"サラミ”を薄く切るように介入の規模を徐々に拡大していくことにする
こうすることで、予算と議会のリソースを戦争にとられることなく、「偉大な社会」のための法案を通すことができた
が、これには膨大な軍事支出を議会へ隠すことを伴い、経済のインフレ要因となって国民生活に影響を及ぼすこととなった


2.賢者たちに欠けたモラル

北ベトナムへの空爆、いわゆる北爆の決断は、大規模な派兵をせずに相手に音を上げさせる、費用対効果から導き出された。そもそも空軍無敵論=ニュールックは、核兵器と空軍重視で軍縮を狙った政策から生まれている
しかし、北爆はさらなる北ベトナム軍の南下を呼び、さらなる戦闘部隊の投入を必要とした。ベトナム社会の高い出生率は年間10万人の兵士を新たに動員できて、結局は数十万規模の派兵で対抗せざる得なかった
その大軍の派兵でも現地のウェストモーランド将軍は5年以上の長期戦を予想していたが、ワシントンの政権は数年、次の大統領選挙までにメドをつけるつもりで決断していて、それぞれの観測に重大な齟齬が生じていた
どうして、こうなったのか?
著者は自身ですら1963年までそうだったと告白したうえで、アメリカが建国以来不敗であり、自らの力で不可能なことはないとする圧倒的な自信と傲慢さから来たとする
また“賢者”たちは頭は良くても、道義やモラルに乏しく、政権内に残るために保身を優先して必要な施策を曲げてしまう
人間として政治家として、何をしてはいけないか、それが欠けているから、皮算用で人の上に爆弾を落とせるのだ
当代、最高の頭脳と評された人々でも斯くの如し
今の日本でも、薄い“インテリ”は毎度メディアをにぎわせていて、下手すりゃ国政に影響を与えたりするので、騙されないように気をつけたいもんである


*23’4/5 加筆修正


前巻 『ベスト&ブライテスト』 中巻


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