【プライム配信】『空母いぶき』

ネタにCGが追いつていない……


20XX年、日本は南海の島国カレドルフを中心とする「東亜連邦」から、波留間群島への相次ぐ領海侵犯を受けていた。クリスマスが迫る、12月23日午前1時、海上保安庁の巡視艇が東亜連邦の船舶から銃撃を受け、空母「いぶき」を含む第5護衛隊群を急遽、派遣する。その途中に潜水艦の攻撃を受け、群司令の涌井(=藤竜也)が負傷し、「いぶき」艦長の秋津竜太(=西島秀俊)に指揮権が移譲した
そんな「いぶき」には、見学に来ていたネットニュース記者・本多裕子(=本田翼)が乗り込んでいて……

かわぐちかいじの漫画『空母いぶき』の映画化作品
2019年公開で、原作の改変や垂水首相役の佐藤浩市のインタビューを巡り、いろいろ物議をかもしていたと記憶している
最大の改変は、相手国が原作の中国から、架空の国家「東亜連邦」にしたことで、そんなポッと出の国先進国と事を構えるのかが、まずおかしい。まして、金を食い人材の養成も必要な空母を運用できるかと、軍事考証のリアリティが大きく失われているのは確かだ
しかし改変の動機そのものは充分、理解できる。中国を仮想敵とする映画に、金を出すスポンサーもないだろうし、俳優を揃えるのも大変だったのだろう
それでも予算が足りなかったのか、夜間で見えにくい戦闘シーンが多く、海のバックに記者が動画を撮る場面では、いかにもCGを貼り合わせた感が露骨で辛かった

ただ構成、ドラマの演出は、悪くなかったと思う
秋津竜太と新波歳也(=佐々木蔵之介)の理と情を巡るぶつかり合いは原作さながらだし、遠い海の出来事を知らずに過ごすコンビニ店長(=中井貴一)ミリタリー物の空気をほっこり包んでくれる。そして、その戦場と日本的日常をつなぐジャーナリストと、登場人物の配置がよく考えられている
当時の安倍首相に似せたとされる垂水首相も、優柔不断に見せて日本をギリギリのラインで守るというスタンスで貫いており、当時叩かれたような姿ではなかった
西島秀俊の秋津は超然としたカリスマというより、非常時に普通の判断ができてしまう奇人と感じで、漫画に求められるヒーロー性を、映画の中で人間味のあるキャラクターに落とし込んでいた
ただ、最後に常任理事国の潜水艦が割って入る結末(『沈黙の艦隊』リスペクトか?)は、日米安保的にどうなのかと引っ掛かりはした
安全保障のリアルを啓蒙というより、有事に直面した際に起こる問題を普段、関心のない人に突きつける作品なのである


原作 『空母いぶき』 第1巻・第2巻




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