『機動戦士ガンダムUC 8 宇宙と惑星と』 福井晴敏

ついにユニコーンのアニメ化が発表された。ニュータイプ6月号のインタビューで「アニメ芝居は止めましょうということ」で監督と一致していると答えていたそうだが、どうだろう
小説中のキャラの動かし方とかは充分、アニメっぽい気がするのだが(笑)

機動戦士ガンダムUC (8)  宇宙と惑星と (角川コミックス・エース 189-9)機動戦士ガンダムUC (8) 宇宙と惑星と (角川コミックス・エース 189-9)
(2009/04/25)
福井 晴敏矢立 肇

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今回は冒頭に新MSを登場させつつも、戦艦ネェル・アーガマでの謀略、白兵戦が中心だ。『亡国のイージス』の作者だけあってガンアクションはまさに十八番。ストーリー展開も誰が敵味方になるか分からない、オセロゲームのようなクーデター合戦で、久々に楽しませてもらった
MS戦ではユニコーンは旧式のハイザック達と交戦するのだが、お姫様が同乗しているので思うように動けないなど戦闘の設定にも工夫がある
話の展開も含めて一冊の単行本としては、かなりクオリティ高い娯楽作品になっている。シリーズ中、一ニを争う完成度ではないだろうか

<以下、ネタバレ気味なので読んでいない人は覚悟してください>


その一方で、シリーズとして考えると各キャラの評価を下げてしまう巻でもあった
まず、ブライトさん
苦心して編み出した策が見事に踏みにじられる展開である。この一件がもし明るみに出れば軍歴に傷レベルの話では済まなくなるだろう。結果的に理想論に走って見込みが甘いと言われても仕方ないわけで、堅実に仕事を積み重ねてきた人の結末としてはあまり可哀想だ
閃ハサのファンとしてもこういう使い方をするのなら出して欲しくはなかった

次にバナージくん
ジンネマンが心の弱い人間であることを察せないのは、どうも迂闊にみえる。前巻、前々巻を見ても散々ぶれてきたオッチャンじゃないか。それを盲信してしまうのは、おっちゃんをまだ「疑似的な父親」として依存しているからなのだ
本巻で、彼は強化人間ではなくニュータイプだと言われるのだが、余りに察しが悪すぎる。背信を確信せずとも、不安は感じて欲しかった。彼の想像力はカイジでいうとカードジャンケン編レベルであり、箱を託せる人間とはとても思えないのである

その宿敵たるフル・フロンタルカリスマ性が感じられない
言っていることは調子いいけど棒読み評価で、ミネバにダメだしを喰らう始末である。一瞬でもこいつは本物ではないかと感じさせてもらいたいところであり、到底アンジェロの股間を熱くする存在には見えない
『ローレライ』の朝倉も気味が悪いだけだったし、この手のキャラは作者の守備範囲外なのだろう

で、諸悪の根源(笑)ともいえるジンネマン
ガランシェールの面々と連邦軍とは呉越同舟でありえない展開ではないのだが、彼が積極的にバナージやミネバの信頼を裏切ってしまうのはなんとも・・・
で、その最後に前巻のようなドラマを再出させるのである。その部分だけを見れば力の入った名シーンだが、前巻、前々巻を読んでしまうと構成ミスとしか思えない
今後の彼の立場って・・・。言いたくないが死に所を誤った感がある

ミネバ、マリーダに関しては横ばいといったところ
ミネバ相変わらずお姫様キャラ全開。フル・フロンタルが下手うったからって、演説は自重して欲しい(笑)
マリーダは今回も人形ぶりを発揮。強化人間は人格をわざと欠落させている、なんて文章もあって寂しすぎる・・・

希望の星は、やはり今回薄かったヘタレコンビだろう
アルベルトリディに叔母との関係を暴露し、自分の中で相対化させる成長ぶりだ。彼が叔母を刺せるか、それとも犬と終わるかが今後の最大の見どころだろう


一冊の小説としては話のテンションも高いし面白いが、連作としてみると少しクビを捻りたくなる巻でしたな


今回のユニコーンの訪問先はラグランジュ・ポイント1。一年戦争後に発足したジオン共和国がご当地ネタとして登場した
このジオン共和国、どう見ても戦後の日本がモデルなのである。国威発揚と連邦への従属を使い分ける世襲政治家懸賞論文に、ろくに積極自衛権を持たない共和国軍
まあ、それは『創竜伝』的な作家のお遊びと片付けてもいいのだが、すこしおやっと思ったのが共和国軍がMSと戦艦を持っていたこと
なぜ、連邦に吸収される予定の共和国が治安維持以上の軍隊を持つ必要があるのだろう。連邦軍は軍縮を避けるためにネオ・ジオンを温存させることすらしているのだから、雇用のためにも堂々と共和国に駐留させているのが自然だ
現実の日本も朝鮮戦争が起こるまでは、自前の軍を許されなかったのである
結局、右翼的風潮を風刺しようとして、作品世界のバランスを脅かしていると思う。サンライズのスタッフはポリティカルな設定をチェックしてないのだろうか?
どうせならワイマール時代のドイツをモデルにして、退役軍人の私設軍隊がサイド内に溢れてるって方がらしいんだけどなあ

次巻 『機動戦士ガンダムUC 9 虹の彼方に(上)』
前巻 『機動戦士ガンダムUC 7 黒いユニコーン』
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