幕末の夜に暗殺で名をはせた“人斬り抜刀斎”緋村剣心(=佐藤健)は、戊辰の役が終わって後、ぱったりと消息を絶っていた。しかし維新から10年後の東京で、“人斬り抜刀斎”が再び姿を現し、警官隊を相手に斬殺事件を起こす。抜刀斎に騙られた流派、神谷活心流の神谷薫(=武井咲)は、汚名をぬぐうべく立ち会うも、間一髪で剣心に助けられた。偽・抜刀斎の鵜堂刃衛(=吉川晃司)は、阿片密造をもくろむ観柳(=香川照之)に雇われつつ、人斬りに戻った剣心との勝負を望んでいて……
もう7年経つのか……。今年に最終編が公開予定だった人気漫画シリーズである
原作は世代のわりに読んでなかったりするが、元がジャンプ漫画なので理解に問題はない
少年時代に暗殺者として使われてきた主人公が、戦争が終わったのを機に刃の部分が潰れている逆刃刀をひっさげて不殺の誓いを立てる。なんで逆の部分の刃にしたのか不思議ではあるが、そうして後ろ暗い過去と折り合いをつけようとしている
それに対して、鵜堂をはじめとする敵役に、警官に転じた元新選組の斎藤一(=江口洋介)や新阿片の製造に関わった高荷恵(=蒼井優)まで、「しょせん人斬りだの」「人を守れない偽善」などとこれでもかとなじられる。せめてこれから先の人生でベストを尽くすのか、人を斬っても仕方ないと開き直ってしまうかの葛藤が本作のテーマだろう
「人を活かす剣」という、もっと甘っちょろい神谷薫の理想が、剣心の支えとなって最後の結末にもつながっていく。まあ実際のところ、平時の剣法が剣道として残っていくためには、こういう思想が持たなきゃだめなわけで、時代的な要請だったりするのだが
ちなみに柳生新陰流における「活人剣」の思想は、本来忌むべき剣(武力)も使い方によっては人を生かすためにもなるとし、一人の悪人を殺して大衆を救う「一殺多生」を含んでいる。テロを肯定する論理にも使われるので、かなり扱いの難しいテーマである
かなりシリアスな暴力表現がされている一方で、原作の空気を守るためにオブラートに包まなくてはならないところもあり、テーマを突き詰めきれない辛さを感じた
作品を見る気になったキッカケは、先月読んだ『時代劇入門』の富野インタビューで言及されていたから
ラバーを使った軽い刀身をつかったアクションは確かにスピード感はあった。ワイヤーアクションを多用し誇張された動きは、半ば特撮ヒーローものになっていて、いわゆる「殺陣」ではない
主役がライダー俳優であることを生かした“特撮時代劇”なのである
たしかに、そこに真剣を扱っているような重みはない。感覚としてはライトセーバーに近い
これを良しとするかは、若い頃のゲーム体験が大きく影響するだろう。時代劇にゲームのようなアクションやリアクションがありとするなら、これからも続いていくはずだ
ファミコンともに人生を歩んできた管理人の世代はその境界に位置していて、時代劇としてはアレでも、特撮時代劇としてはアリだと思えた
どちらかといえば、主人公の身体性が気になって、250人の浪人を相手したあとに強敵相手に普通に立ち回り、ラストの一騎打ちでも手傷を負ったあとに驚異的な跳躍を見せたりする
中国の武侠物でもあったりするけど、疲労や負傷の概念がない! 漫画というバックボーンありきで納得するしかないのだろうか
まあ、細部の破綻を勢いで押し切ってかつ面白いのは、ジャンプ漫画らしいのかも(苦笑)
関連記事 『時代劇入門』