『ホムンクルス』 第15巻 山本英夫

いろんなものを積み残した一年でした。せめてこの漫画ぐらいは……


ホムンクルス(15) (ビッグコミックス)
小学館 (2015-05-15)
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ついに最終巻。「嘘」の祝祭クリスマスは、そこに入れないものに厳しい結末を用意した
前巻で娘との再会を決意したに見えたイタさんは、公園の木で首を吊ってしまった名越は出口を示してみせたが、そこに辿りつけるかは本人たち次第なのだ
公園ではホームレスたちが次々と追い出され名越の車にも駐禁の札が下げられていた。「どこに行けばいいんだ」と激高する彼に、謎の女「ななこ」(ななみ)が駆け込んでくる
「ななこ」は愛人のヤクザの裏金を持ち去っており、名越はその逃避行に巻き込まれていく

「ななこ」ブサイクな彼氏「さとし」に捨てられて、整形した過去があった。それは名越にとって元カノ「ななみ」と重なり、妊娠した彼女を捨てて整形して華やかな「嘘の世界」へ潜り込んだことを思い出す
境遇が重なったことで結ばれようとした二人だが、「ななこ」は名越の顔に不気味な“鬼”を思い浮かべるのだった
その鬼の正体とは、冒頭に伊藤学に指摘された自分を観てくれというエゴ。名越はホムンクルスを見えないという「ななこ」に対して、自分のようにトレパテーションの手術を受けるように求めた
そして、名越は手術を受けた彼女に、自分自身の姿を見出して体を交える自分を自分で犯すという、自らの尾を食べる蛇「ウロボロス」を想起させるような、自分だけの閉ざされたナルシストの世界に没入してしまうのだ
「ななこ」の側も整形後の自分と性交しており、破滅的な終幕へ突き進む
結局は人の心というものは、自分自身でイメージする他なく、他人は憶測でしか測れない。名越は観てもらうつもりが、彼女を自分と同化させただけであり、結局は自らの殻に閉じこもってしまったということなのだろう

正直、この破滅的な結末は納得できなかった(苦笑)
イタさんの自殺しかり、15巻になって、急に負の方向へ舵を切った感が否めなかった
名越は伊藤学がいて、ホームレス仲間がいて、孤立した存在ではない。このニューシネマ的なラストを目指すのなら、そう転がっていく布石がもう少し欲しかった
作品を総括すると、トレパテーションというオカルトめいた道具立てを交えつつも、人の心をホムンクルスという異形の怪物でイメージして「カウンセリング」していく、奇妙で不思議な人間ドラマという他ない。ときに相手の体をまさぐり、性交(!)にいたるという体当たり過ぎる手法ではあるものの、人の心の歪み=ホムンクルスを昇華したときには、何とも言えぬ感動があった
名越進の人生は、田舎から憧れの東京へ乗り込んでバブルを経験するという80~90年代初頭のものであり、土臭い地方から「嘘の都」という対比が今の若い人からするとずいぶん分かりにくいものだろう
その一方で、自分探し、「生の実感」を追求した結果、自慰的な世界に陥るという失敗例を示してくれたとも思う。ここまで来たら抜け出して欲しかったですが、ハア


前巻 『ホムンクルス』 第13巻・第14巻
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