藤田嗣治 手しごとの家 <ヴィジュアル版> (集英社新書)
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林 洋子
集英社
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実家に藤田嗣治の本が一冊あったので
藤田はただ絵を描くだけの画家ではない。自分で自分の絵を飾る額縁を作り、自分のアトリエのジオラマを作り、自分と妻の衣装を裁縫で作り、食器の絵付けもしてしまう
自作の衣装とオカッパ頭の髪型には生活費を切り詰める側面もあったものの、「芸術家は芸術品をまとうべし」をポリシーとして、生活のすべてに芸術家のこだわりを見せた
本書はそうした藤田の製作物と、そこから生まれた自画像などの作品を豊富な挿絵(写真)で紹介するものだ
驚かされるのは、画家という肩書を大きくはみ出す、旺盛な好奇心と探求だ
パリの蚤の市から二束三文の人形を持ち帰ったかと思えば、自分で修復してアトリエに飾ってしまうし、“額縁職人”としても玄人はだし。日本に帰った1930年代には、染め物を収集するだけでなく、自ら染織に乗り出す
その活動量に唖然とするしかない
全編に渡って藤田を映した写真は満ちているのだが、後半には写真家たちと関わりや藤田自身の写真への取り組みが盛り込まれている
カメラは絵の概念を揺さぶる存在なのだが、自分の題材に生かせるものとして活用し、戦前には最新機器だったムービーカメラを入手し南米時代の映像が残っているそうだ
一般的には『アッツ島の玉砕』やアメリカ滞在時の『カフェ』の印象が強い藤田だが、進取の気性に富み、他の分野にもとてつもない凝り性を発揮して、自身のアトリエ(と自宅)や収集物さえも作品に変えてしまう芸術家であったのだ
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集英社 (2018-01-17)
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