『政治家とリーダーシップ』 山内昌之

たしか、富野監督がなんかの雑誌で推していたはず


政治家とリーダーシップ―ポピュリズムを超えて (岩波現代文庫)
山内 昌之
岩波書店
売り上げランキング: 733,424


小泉政権以来、メディアと密着し政治が劇場化した今、ほんらい必要とされるリーダーとは何なのか。東洋の歴史から現代政治への教訓を引き出す
本書は、初出の単行本が2001年の第一次小泉政権下。序章にあたる「はじめに」と終章が2007年に文庫本のために書き下ろされている
序章で嘆かれているのは、テレビ番組で報道とバラエティの敷居が崩れている現状である。本来、事実を厳密に検証する報道と、政治家や芸能人の醜聞を垂れ流すバラエティは性格を異とするはずだが、それを同じ枠にすることは「現代の共同体体験における友愛の悪用」(リチャード・セネット)に他ならないとする
一部の政治家と芸能人、キャスターを「有名人」として一括りされ、これに属せない地味な政治家が除外されていく。メディアの世界では流される瞬間だけ、気の利いたことを言う刹那的能力が重視されてしまうのだ
メディアと政治が密着した時代にあっては、ジャーナリストも「反権力」ではありえない。著者は政治バラエティが無関心な人間を政治に近づかけたのではなく、「政治の芸能化」という名の政治化にほかならないとまでいう
そんな社会に公共善と取り戻し、未来の秩序を作るには何が必要なのか。それを問うのが本書のテーマである

序章において、安易な官僚への責任転嫁・中傷を弁護しつつ、その官僚たちの育成方法=法律学に編重する大学教育を批判している。本当の意味のエリートは、歴史、それも自国や東洋の歴史・教養なくして、判断の下地を作れず他国の人間の尊敬を得られないのだ
第一章では、具体的に理想のリーダー像として、江戸時代に薩摩藩を存続させた島津義弘と、家光の異母弟として影から幕府を支えた保科正之を掲げている
島津義弘は戦国時代を引きずる兄・島津義久に足を引っ張られつつも、豊臣や徳川といった強力な中央政権に巧みな外交を展開して、難局を乗り切った
保科正之は将軍の息子に生まれながら、保科家へ養子に出される不遇の存在だったが、腐らずに自分の門地にもおごらず諸大名から副将軍格としてみなされるまでに至った
両者に共通にするのは、他を圧倒する実力・声望を持ちながら、謙虚で公私混同しなかったこと。義弘は島津家の当主でありつつも、嫉妬する実兄の前当主・義久の顔を立て続け、正之は将軍の弟でありながら創業の功臣である大老・老中を尊重して、組織の序列を崩さなかった
著者は特に保科正之を称揚し、武断政治から文治政治への大転換を果たした戦略眼、社会保障や罪刑法定主義を導入するヒューマニティ、愚直な誠実さを評価する

第二章においては、タイトルこそ「リーダーシップの条件」だが、内容はほぼ外交官の条件。ただし、外交官の条件はリーダーの条件にも通じる
外交官の最低条件は嘘をつかず感情の起伏がないこと。一度、嘘をつくとその嘘を合理化しようと嘘を重ねることになって、結局は信用を無くしてしまう。外交の現場では同じ相手と何度も交渉することが多いので、嘘をつかないという信用が最大の財産となる
小泉政権の田中真紀子のようなスタンドプレイに走る外務大臣など、ありえないのだ
第三章・終章では専門の中東を中心とした国際情勢と求められる外交、第四章ではエリート育成のための教育の在り方に触れられている
全編を通して強調されるリーダー(エリート)の資質とは、自国の歴史を中心とした教養「嘘をつかない誠実さ」。まさに正論なのだが、ではこのメディア政治の状況下でそういう人材が育つかという点では、なかなか大変
地道に教育を施していくしかないようだ


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