『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』 村上春樹

昨年は病気で倒れ、親父が死に、最後に軽い失恋を味わうヒドい年だった
今年は確実に去年よりはよくなるだろう

あっ、記事はネタバレ全開なのでご注意を


騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編
村上 春樹
新潮社 (2017-02-24)
売り上げランキング: 748


私に肖像画を依頼した謎の富豪「免色」の目的は、実の娘かもしれない‟まりえ”に近づくことだった。私は免色のお願いを聞き、‟まりえ”を絵のモデルとして招いて、免色は‟まりえ”の美しい叔母、かつての恋人の妹・笙子へと近づく。しかしある日、‟まりえ”は突如として失踪する。騒然とする周囲をよそに、私は‟騎士団長”の予言に従って昏睡状態の雨田具彦を尋ねる。そこから不思議な世界へ突入して……

話は「私」が雨田具彦を訪問することで一気に動いていく
騎士団長として現れた「イデアは、具彦が眠る病室で自らを殺すように要求する。絵画「騎士団長殺し」の光景を再現しろ、というのだ
イデアを殺したところから、穴から覗く男「かおなが」が現れ、私は彼を脅すことで‟まりえ”がいると思しき世界へと入っていく。私にとって13歳の‟まりえ”は死んだ妹の写し絵であり、別れた妻・ゆずに対しても同じ感情を引きずっていた
妹の死に立ち向かうことが、私にとっての「試練」だったのだ
それがなぜ‟まりえ”の救出につながるかは、現実をベースに考えるとご都合なのだが(笑)、「私」の冒険は‟まりえ”の冒険と表裏一体となっており、終盤に彼女の「父を知る旅」が描かれる。『スプートニクの恋人』などハルキ小説では女性の冒険が割愛されることが多いので、ちゃんと取り上げられるのは意外だった
まりえの冒険は「私」に比べて写実的でややそっけないが、作者にとってはチャレンジだったはずだ

騎士団長とは何だったかというと、主人公やまりえに対する助言者であり、ユング心理学の「老賢者そのままだ
雨田具彦の『騎士団長殺し』は、歌劇『ドン・ジョヴァンニ』を下敷きにナチスに対するオーストリア抵抗運動に影響されたもののはずで、上巻の巻末では『トレブリンカの反乱』(邦題『トレブリンカ叛乱』)からの引用があった
しかし、下巻では最後に東日本大震災と福島原発に言及されたものの、『騎士団長殺し』に内包された課題「邪悪なる父を殺し、その血を大地に吸わせる(p322-323)は放り出されたままに終わった。癒されたのは「私」と‟まりえ”で、世界と「私」は接続されず距離をとったままに終わったのだ
「白いスバル・フォレスターの男」主人公の行いを監察する審問官のような存在で「邪悪なる父」になりえないし、免色も実の娘を追いかけてしまう「ちょっと嫌なおっさん」に過ぎず、悪役には発展できなかった
本作は打ち上げたアドバルーンの割に、うまく中身が詰められなかった作品だと思う
作中で主人公が‟まりえ”の肖像画、「白いスバル・フォレスターの男」「雑木林の中の穴」が未完成のままに終わらせたのも、これ以上書き足しても作品が良くならないという自己言及なのかもしれない


前巻 『騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編』
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