『ゼウスガーデン衰亡史』 小林恭二

日本から離れていたり、近づいたりする妙な作品


ゼウスガーデン衰亡史 (ハルキ文庫)
小林 恭二
角川春樹事務所
売り上げランキング: 713,089


1984年、下高井戸オリンピック遊戯場は、双子の天才・藤島兄弟に買収されたことにより急拡大を始める。「ゼウスガーデン」に名を変えて、国内外の一流デザイナーを集めて珍奇なアトラクションを次々に立て続け、人々の欲望を満たし続けて怪物のように日本全国を覆っていく。いつしか、「ゼウスガーデン」は治外法権を持つ一つの帝国となっていた。その狂騒の果てに何が待っているのか

十数年前だろうか、HPで強く推している人がいて、数年後に購入しつつも積読の中に眠っていた
小説は1980年代より始まる遊戯場「ゼウスガーデン」の歴史をたどる年代記である。解説にある筒井康隆と作者の対談によれば、『ローマ帝国衰亡史』からではなくモンタネッリの『ローマの歴史』を下敷きにしたらしく、ローマの偉人ぽい立ち位置の人がそれらしく出てきて、人間臭い歴史絵巻が展開される
作風はというと、80年代の日本からスタートしつつ、「リアリティ」という言葉をはねつけるように「ありえないフィクション」を上塗りしていくところだろう。特にそれが作中の新しいリアリティを確立するわけでもないのだが(管理人はのれなかった)、荒唐無稽、気ままに書いているように見せかけて、実は80年代から急成長するディズニーランドなどのテーマパークVRを生み出すいたるゲーム産業の未来を睨んでいて、20年以上経った今、現実とのリンクの仕方に驚かされるところもある

1984年はいわば、バブル景気が膨らんでいく黎明期であり、「ゼウスガーデン」という遊戯空間の拡大がこれに重ね合わさっているのは言うまでない
お立ち台に代表されるディスコブームを思い起こせば、作中に展開される過激なアトラクションもその延長線上のものとして理解できるし、各国の建造物をコピーした宴会場なども、雨後の筍のように地方に建てられた箱物事業や豪華リゾートを連想できる
ただゼウスガーデンのデザイナーたちの感性は、現実のリゾート開発よりはるかに洗練されていて、その悪趣味さえも芸術性を帯びている。バブル経済はここまで壮大な構想を実現できなかったし、渦中の日本人もここまで快楽主義になれなかった。なれれば、過労死の問題など消えてしまったことだろう
作品世界と展開が現実の日本とあまりにかい離して、日本人が読む物語としては「ありえた未来」ではなく、「ありえないフィクション」へ飛躍してしまい(その分、楽しいのだが)、他国の話のようにしか感じられなかった

巻末に足された「ゼウスガーデンの秋」を読むに、ゼウスガーデンは作者自身の遊び場であり、それに関わった奇抜なデザイナー=権力者たちと楽しんでいるようでもなる。あまり大上段に社会ヒヒョウを期待して読まず、いっしょに楽しんで読めばいいのかもしれない


*2017’10/6 記事の原文を書いたのは、ネットがつながらない内なのだが、その後の政局(希望の党→民進党分裂)を見ると遊技場間の政争を思い起こしてしまった(笑)。小池百合子の矢内原夫人説
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