『愚民社会』 大塚英志 宮台真司

両者の最大の違いは、安全保障に対する認識


愚民社会
愚民社会
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大塚英志 宮台真司
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日本は既に終わっていた!? 東日本大震災時の直後に、日本社会の問題点を再確認する
何度となく行われてきた宮台真司と大塚英志の対談集である
三段構成に分かれていて、一番最初に載っている対談が震災直後の2011年。その後の二つは、大塚氏が責任編集のムック『新現実』に収録されていたもので、既読の人にはすこし勿体ない内容である
それでも、ゼロ年代から10年代における両氏の活動の変化、震災が起こっても変わらない現状認識を見比べることができる
大塚氏側からのインタビューという形式をとっているがゆえに、「なぜ宮台氏はそんなことをやっているのか」という対談者個人の問題からスタートしてしがちなのがやや迂遠ながら、両氏しかぶつけられない問答が展開されている

まえがきにあるように、震災後の対談が一番刺激的である
宮台氏が2011年3月16日における天皇の「おことば」を、持論である田吾作による天皇利用と見なすところから始まるのだが、大塚氏が即位20周年記念の式典に秋元康によってプロデュースされたことを怒り、日本人は年号を変えることでチャラにしてしまう前近代的時間観念の持ち主であるとして土人」と規定してしまう
本書のタイトルである『愚民社会』も、この「土人」発言からくるのだろう
昭和天皇崩御のさいに記帳し(このとき、浅田彰は「土人」と評したそうだが)、戦後民主主義を擁護するとしてきた姿勢からは驚きだが、三本目にある対談によるとそれは改憲を警戒してのポーズだったそうだ
「土人」というと、最近では沖縄で大阪府警の機動隊員がデモ隊で浴びせた言葉として記憶に新しい。「田吾作」(=田舎者)には「自分も元はといえば」という含みがあるが、「土人」には発言している側と断絶があって、‟あえて”という枕詞をおいたとしてもどぎつさが残る

大塚氏のどぎつい表現はともかくも、一見は欧米化したように見える日本社会が、実は空気で動いてしまう「土俗的」なもので左右されてきたのは事実。ハレもケもなくなったはずの近代で「祭り」を求めてしまうから、知っている「歴史」がせいぜい戦国や幕末といった動乱期に偏ってしまうという指摘は耳に痛い
しかし、民主主義の母国であるフランスがカソリックから「人間の平等」という伝統を受け継いだように(『シャルリとは誰か?』エマニュエル・トッド)、近代化に前近代以前の伝統文化が影響するのは避けられない。そういう伝統のない日本で、同じような経路の近代化はそもそも困難なはずだろう(志賀直哉はフランス語を公用語にしようといってたそうだけど)
「空気」で動く社会も、前近代では諸藩による地方分権の時代があったわけで、天皇を祭り上げる形で作られた「明治国家」から全国化したように思える。日本の時代を遡れば、日本人にもいろんな可能性があるのではないだろうか


大塚氏が参照する柳田国男については、こちらでも他の人の本もあたってみます


関連記事 『シャルリとは誰か?』

新現実 Vol.2 (カドカワムック (178))

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