『中国共産党の経済政策』 柴田聡 長谷川貴弘

引き返せない依存関係


中国共産党の経済政策 (講談社現代新書)
柴田 聡 長谷川 貴弘
講談社
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中共の習近平政権が狙う経済戦略とは、いったいどんなものなのか。中国の日本大使館で勤務した著者二人が、その政策と経済可能性を探る
中国批判の漫画の次は、冷静に中国経済を分析した本を手にとってみた
作者は在中国日本大使館に四年間の長期に渡って勤務した財務官僚と、調査員として在籍した大学講師で、実際の中国当局との折衝や実地における調査、統計の分析から、日本にとっての中国経済の魅力が語られている。政治については、今の政治体制でいいのか、とかそういう政治の是非には切り込まず、あくまで将来の見通しや日本への影響に留まる
自分の仕事に関しては手前味噌な部分はあるものの、中国側の論理に飲み込まれておらず、日本の官僚として独特のお国柄にどう対応するか、実践的な姿勢である
出版が2012年と習近平の党総書記就任間もない時期であり、今では本書で期待されている李克強首相の辞任説が飛び交うとか、あての外れた部分はあるものの、マクロの分析は現代中国の本質を突いたものだ

中共の体制の特徴は、一党独裁による「経政一致。他の大国とは違い、“党”が政府に優越し、日本の内閣にあたる国務院の首相より党の総書記のほうが序列は上。人民解放軍は党の統率を受けるし、司法も党の影響下にある
そうした一元的支配の体制では、危機に応じて強いトップダウンの政策がとれる。2008年のリーマンショックに対しては、短い期間で四兆元という巨大な内需拡大政策をまとめあげ、国有企業を動員した証券市場の買い支え国有銀行への公的資金注入など、日本なら国会審議などで要する手間を飛ばして、党→政府の決定だけで実行できてしまう
危機に応じて強みを発揮する「経政一致」の体制も、政府の政策を中央銀行が掣肘できないことにもつながる。この内需拡大政策も古い生産設備を更新できないなど構造改革に遅れをもたらしたり、さらなる不動産バブルを生んで庶民から持ち家が遠くなるなど、ひとつのベクトルだけの政策は副作用も大きい

成長率が6%台に落ち着いてきた中国経済は、今後どうなっていくのか
一人っ子政策による少子高齢化の進展や、農村から都市への労働力の流入が一息ついてきたのは、確かに経済成長の足枷になる
外国からの投資や公共投資に集めて成長率を作る「粗放型経済」には限界があり、中国政府も「量」から「質」への転換を旗振りする。しかし依然として外国の大企業との合弁会社で輸出に依存する経済であり、ドコモにスマートフォンを供給する「華為」などの例外を除いて中国自前の世界企業を生み出せていない
政府が後押しした製造業はともかくも、極めて強い統制下にある金融・保険商品、首都・北京すら覆う大気汚染交通インフラの貧弱さから来る大渋滞など、庶民の生活に直結する民生分野においては、多くの問題が残っている。GDP世界第1位に迫る経済大国であると同時に、一人当たりのGDPはタイやジャマイカと同等という開発途上国の側面を持っているのだ

逆にそれだけ未成熟の部分が残ってなお成長し続けていることは、中国の発展の可能性を示すものでもあり、日本が入り込む余地の大きさを示すものでもある
また、地方の格差が巨大なのも大陸国家・中国の特徴であり、基本的なインフラが未整備な内陸部では、公共投資型経済も有用になる。多角的な視点で中国にフロンティアを探すことが、日本経済躍進の礎となる。両国のつながりはすでに、政治的な対立から他へ置き換えられないレベルに進んでしまっているのだ
著者が掲げる日本側の課題は、大使館と本土政府の温度差。欧米諸国は自国の大企業を後押ししているのに対して、日本は肩入れ批判を恐れてあまり相談に乗らず、他国に差をつけられている。内外一体となった支援が成否を分けるのである


チャイナ・インパクト
柴田 聡
中央公論新社
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