『ヌメロ・ゼロ』 ウンベルト・エーコ

イタリア版松本清張
新聞の出資者コンメンダトール・ヴィメルカーテのモデルはベルルスコーニらしい


ヌメロ・ゼロ
ヌメロ・ゼロ
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ウンベルト・エーコ
河出書房新社
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売れないライターであるロマンナは、シナイという男に依頼され、新たに創刊される日刊紙『ドマーニ(明日)』に参加する。テレビに負けない情報で読者を揺さぶる方向性で動き出すも、出資者であるコンメンダトール・ヴィメルカーテの隠然とした意向にいつのまか左右されてしまう。そして同僚ブラッガドーチョから、教皇庁の秘密、ムッソリーニの生死の謎、対コミュニスト部隊ステイ・ビハインドを聞くに及んで、事態は急変して……

『薔薇の名前』などで知られるウンベルト・エーコの遺作である。管理人はエーコの作品がはじめてで、まさか遺作から読むことになるとは思わなかった(苦笑)
出版は2016年ながら、作品の年代は1992年の5月から6月の一月間。ソ連が崩壊して冷戦時代の緊張が良くも悪くも溶け始めた時代。ネットが一般的ではなく、記憶媒体はフロッピーディスクで、主人公たちの新聞が意識するライヴァルも週刊誌でありテレビである
冒頭は、主人公が寝ている間に水道を止められるという事案、本人にとって不気味でも他人にとっては取るに足りないアクシデントから始まる。主人公が病んでいるとしかいえない出だしだが、その後に日刊紙の準備に携わるところから、神経症気味になるに到った経緯が分かる
話の展開はどこか松本清張を思い起こしてしまうが、かつてイタリア共産党が大きな勢力を持ち、極左組織がマフィアを介して保守勢力と結びつき、元首相を誘拐暗殺するとか、百鬼夜行の裏社会を持つイタリアの風土からすれば、遠い昔のことではないのだ

殻を破ろうとして生まれたはずのメディアが、どうやって既存のもののような保守性、事なかれ主義に陥っていくかが、本作の焦点だろうか
編集長であるシナイは、主人公コロンナを参謀格に経験の薄い記者たちを指南していくが、読者に新しい刺激を与えるとしつつも、不愉快になることを書かない読者にあくまで印象だけを残して、一定の方向に誘導することを目的とする。想像を誘うだけで、その責任までは取らないのだ
主人公のように本来は独立心をもった人間でも、いったん組織に属してしまうと、ブラッガドーチョのようなはねっ返りを除き、その枠内でしか動かなくなってしまう。官僚を批判する側が官僚的になってしまうのは、日本だけではないらしい
保守層を敵に回すことが出資者の意向に沿うのか、マフィアを敵に回す覚悟があるのか、そこまでするほどの意味があるのか、そんな内輪への言い訳を言っている間に、外国のメディアに堂々と暴露されてしまう。この報道途上国あるあるが、物悲しい
もっとも根っこでは、どこのメディアも抱えている普遍的な問題でもあり、一流メディアの報道という触れ込みで、実はそれも情報操作されているという現実もあるわけだが
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