『ビッグ・ノーウェア』 ジェイムズ・エルロイ

警察が腐敗しずぎの50年代


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1950年、1月のロス。若き保安官補アップショーは、遺体が獣に引き裂かれるという異常殺人に出会い、その解決に情熱を注ぐ。その死体解体現場を発見するものの、市警の管轄を不法に入るというミスを犯してしまう。一方、離婚危機を抱える警部補コンシディーンは、義理の息子の親権と名声を手に入れるため、赤狩り作戦に乗りだす。暗黒街の始末屋バズ・ミークスは、金のためにその作戦に組し、アップショーもまた異常殺人の捜査協力を条件に、左翼組織への内偵を試みるが……

『ブラック・ダリア』に続く、LA暗黒街シリーズの二作目である
ときは冷戦が始まって間もない1950年。ハリウッドでは赤狩りの波が何度も押し寄せ、作中ではエキストラと裏方の組合UAESが待遇改善のデモを起こしている。それを潰したい大実業家ハワード・ヒューズ暗黒街の帝王ミッキー・コーエンは傘下のティームスター(全米トラック運転手組合)に対抗のデモを打たせている情勢だ
この赤狩りを潰すためにUAESの弱みを握ろうと、アップショー、コンシディーン、バズ・ミークスがそれぞれ違う動機で誘い込まれる
前半はこの赤狩り作戦とアップショーの追う連続異常殺人が別枠として始まるが、下巻に入ると一気に交わりだし、次々に秘密が噴出して主人公たちを七転八倒させる
そのピンチのなかで、アップショーの正義感が無頼漢バズ・ミークスに乗り移り、冷淡なコンシディーンをも動かすという漢気の連鎖がたまらない
あまりに筋が複雑過ぎて、最後に作中で解説せざる得ないのは、ミステリー小説として不手際(笑)かもしれないが、いろんな意味で濃い名作である

前作がブラックダリア事件を題材としたように、本作でも実在の人物、事件が重要な位置を占める。そこに作品オリジナルのキャラクター、事象が乱入するので、どこまでが事実なのか、素人には判別できない(苦笑)
日本版WIKIにも確認できないスリーピーラグーン事件は、1942年にメキシコ系青年が殺されたことに対して、警察が無関係のメキシコ系移民を多数逮捕した冤罪事件である。背景にはアングロサクソン系白人のメキシコ系移民=バチューコに対する偏見があり、太平洋戦争の開戦で日系移民が収容所に入れられたことにより、よりメキシコ系に差別の対象が移行したという
主人公たちの視点ですら強烈な差別表現が次々に登場し読者を鼻白ませるが、これも50年代の苛烈な時代を再現するため。メキシコ系移民、黒人、同性愛者といったマイノリティがどういう扱いを受けていたか、掛け値なしに映し出されている
役人の出世のために行われる赤狩りに対しては、コンシディーンに「とてつもなく無駄であり、とてつもなく恥ずかしいことだよ」と言わせる。題名である「ビッグ・ノーウェア」=大いなる無とは、この無駄な労力、無駄な犠牲のことを指しているのだろう


次作 『LAコンフィデンシャル』
前作 『ブラック・ダリア』
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