『1998年の宇多田ヒカル』 宇野惟正

新アルバムとのなかで、いろんな人と組んでいるけど、椎名林檎との「2時間だけのバカンス」はいいぞぉ~


1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)
宇野維正
新潮社
売り上げランキング: 35,757


1998年、もっともCDが売れた年に4人の女性アーティストがデビューした。宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみ。彼女たちの軌跡を追う
宇多田ヒカルの復帰を合わせたわけではないようだが、2016年1月が初出
本書では、音楽界における1998年という年の意味を分析し、4人の有名女性アーティストの歩みとそれぞれの関係性が語られていく。著者も含めた過去のインタビューや、アーティスト自身の発言や記事から、その時々の彼女たちの状況が掘り起こしていくのだ
CDの登場と1998年前後の音楽状況など現代音楽史の勉強にはなるが、章立てられた4人に関しては、肝心の「何を歌ったか」について触れていないので、内容的にはやや肩透かしだった
著者の称する“音楽ジャーナリスト”は、アーティストを取材しても評論はしないものらしい

そもそも音楽界における「アーティストという言葉はどこで生まれたか
著者は女性「アーティスト」の関しては、大胆にも「同性にウケる」ことを条件にあげる。80年代からのアイドルブームが終わりつつあるときに、アイドルたちはその枠組みからはみ出さざる得なかった
その代表的な存在が工藤静香であり、ロック・シンガーのイメージを全面に出した本田美奈子や、自ら作詞するアイドル的ソロ・シンガーのはしりである森高千里だった
小室哲哉は時代に取り残されたアイドル予備軍を「アーティスト」として再生する存在だった。安室奈美恵、華原朋美、篠原涼子は同性の支持が高かった
宇多田ヒカルが登場した1998年は、その小室ファミリーのピークが過ぎて、一般にインターネットが普及した時期と重なった。ドラマとのタイアップなどテレビから売れる時代から、ラジオやネットをきっかけに知る時代の転換点となっていた
CD市場が成熟して昔の名曲も再版されるようになると、若者にとって「現在の音楽」と「過去の音楽」の境目がなくなり、同時代の洋楽も聴きやすくなった
そして1998年にデビューした女性アーティストには、「アイドル」からの路線転換というコンプレックスがなくなっていた

著者は宇多田ヒカルに「革新」、椎名林檎に「逆襲」、aikoに「天才」、浜崎あゆみに「孤独」というキーワードをあてはめる
宇多田ヒカルの「革新」は分かるにしても、椎名林檎の「逆襲」は自分に張られたレッテルに対するソレであり、東京事変解散後に「静かなる逆襲」など好んでつけた言葉から。本人的にはともかく、管理人からすると着実にのしあがっているイメージなのだが
aikoの「天才は著者があまり知らなくて、ライターとして使ってはならない言葉「天才」をあてはめてしまったとか(苦笑)。ただaikoが、普通の音楽雑誌などの取材を受けず、浜崎あゆみと同じく「芸能」の世界と捉えているのには驚いた
浜崎あゆみ「アイドル」から「アーティスト」に変化した旧来のタイプながら、宇多田ヒカルとの売り上げ枚数戦争に巻き込まれてしまった。不本意なベスト盤を出したのちは「孤独」な側面を隠して、ポジティヴなキャラクターを演じることを強いられる
このあたりのところを語るなら、楽曲の内容にも触れないと説得力がない。宇多田ヒカルのトリビュートアルバムの際に、「Movin'on without you」をカバーしたのを、宇多田ヒカルに対する感情としたのも、かなり屈折した見方だと思う(普通に考えると、某ジャニーズではないのか)
ただ宇多田ヒカルの周辺に関しては自身がインタビューしただけに鋭い。FINAL DISTANCEを真の音楽家としてのデビューというのは納得だ(管理人もそこからグッと好きになった)
CD市場が事実上壊滅しライブ中心の時代と重なり、スタジオ・ミュージシャンである彼女がこれからどう活動するのかは、確かに気になるところだ


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宇多田 ヒカル
EMI Music Japan Inc./U3music Inc.
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