『歴史対談 徳川家康』 山岡宗八 桑田忠親

今年の大河のMVPは、内野聖陽


徳川家康―歴史対談 (1979年) (講談社文庫)
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家康はなぜ悪役になってしまうのか? 大長編『徳川家康』を書き上げた山岡宗八と歴史学者が英雄の実像に迫る
徳川家康というと、江戸260年の泰平を築いた天下人にも関わらず、関ヶ原から大坂の陣までで「古ダヌキ」のイメージが強い。今読んでる司馬作品『城塞』がまさにそうなのだけど、長生きしてしまうと晩年の印象が残ってしまい、それがゆえに誤解も大きい
本書では26巻にも及ぶ大著『徳川家康』を著した山岡宗八が、戦国時代と茶人が専門の歴史学者で大河ドラマの時代考証も手がけた桑田忠親と対談し、数々の逸話や史料から虚実をふるい落として、大政治家の実像を探っていく
初出が1979年とファーストガンダムのテレビ放映と同年。新左翼の事件が冷めやらぬ時代を反映して、山岡が「同じ革命でも、中国人は気が長いから成功したけど、日本人は短気だから連合赤軍のようになる」(笑)とぶちあげるなど、飛躍した比較や脱線もある。ただしそれもご愛嬌で、実利一辺倒に見える家康を様々な角度から論じて、その思想、哲学を導き出している

鉄の結束を誇った三河武士団だが、家康以前はそうでもなかった。なにしろ、祖父の清康、父の広忠は家臣に殺されているのだ
なぜがそれが家康のもとで団結するようになったかだが、対談では「家康(幼名・竹千代)が幼くして当主になったから、みんな可愛がったのでは」とやや苦しい推測がなされる
その説を補完するように浮上するのが、家康の母方の祖母・華陽院。最初は水野忠政に嫁いで、家康の母・於大の方を生んだ
しかし、そのあまりの美貌から、家康の祖父・松平清康に講和の条件に譲り渡されることとなる。清康は三河を統一し、三河に所領を持つ水野家を圧迫していた
清康の死後、華陽院は先妻の子・広忠と、忠政と自らとの娘である於大の方を婚姻させ、家康が今川家に人質されていたときには、付き添って養育に当たったという
今川義元から当主として育てる許可を取ったというから、とんでもない女性である
ちなみに、娘の於大の方関ヶ原前後に高台院(北政所)の元に通うなど、家康の覇権に協力していて、広忠との離縁後に嫁いだ久松家は、徳川の譜代として松平姓を賜っている

現実主義者の側面が強くて、いまいち分かりづらい家康の宗教観だが、山岡宗八は天台の加持祈祷や修験道、禅宗、「厭離穢土 欣求浄土」の旗印で有名な浄土宗と幅広い豊かな宗教心の持ち主と強調する
三河一向一揆では、講和に一揆側の物資や本領を没収しないことと、首謀者を殺さないことを条件とし、家来の帰参を寛容に認めたという
実際には一向宗の寺に改宗を進め、従わなければ破却したらしいが、ここで家康が宗教の強さと根の深さを思い知ったのは間違いない
本能寺の変後に信濃・甲斐の戦乱で荒れた寺社へ寄進し、旧武田家の遺臣たちをひきつけたりと、宗教勢力と対立するのではなく、巧みに政治利用していく
キリスト教の禁止と鎖国に関しては、秀吉と同じく人身売買や植民地化の恐れがあったのと、キリスト教内部の新旧対立が一因。家康の顧問となったウィリアム・アダムスが旧教陣営であるスペイン・ポルトガルの帝国主義を強調し、新教国であるオランダとの独占貿易へ導いたのだ
家康の代には、秀吉以上に朱印船が出されており、この時代に多くの日本人町が生まれている

興味深いのが、家康の天下国家に関する考え方。対談では天下をとってもそれをひとつの家系が独占するものとは考えず、それが藤原惺窩→林羅山の朱子学にひきつけられた理由だとする
江戸幕府では、将軍家に適任者がいなければ、尾張、紀伊の分家から後継者を出すこととなっており、その過程を「副将軍」である水戸家が差配する。実際には老中以下の合議制が発達して後継者がいまいちでもなんとかなり、血筋が絶えない限り、そういうことにはならないのだが、ともあれ血筋の濃さが将軍の正統性にはならないのだ。そこに天下を私物化しない、敬天の精神があるという
この精神は、徳川慶喜の大政奉還にも通じるといい、水戸学以前に家康がこうした考えに到っていたと山岡は推測する
徳川家康はこの朱子学と同時に、兵法指南役として柳生宗矩を登用。その全国各地に散らばる門人をスパイとして活用しつつ、石舟斎の「活人剣」=「ほんとうの強者は戦わずして勝つ」の精神を武士道のスタンダードにして、荒々しい戦国の気風から清く正しいサムライへ誘導しようとした
小説同様に家康を理想化していて、出版された年代から古い史料に基づいてしまうものの、講談のフィルターを剥がして時代を作った大巨人に迫る面白い対談だった


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