『天の血脈』 第5巻 安彦良和

戦前日本のターニングポイント。巻末に松本健一との対談後編がある


天の血脈(5) (アフタヌーンKC)
安彦 良和
講談社 (2015-02-23)
売り上げランキング: 18,337


海人族のイソラは、神功皇后の子を実子と信じて見守ろうと、紀州の陣にまで従軍していた。しかし武内宿禰の子・襲津彦は、皇子を父の子とすべく、イソラに斬殺しようとする。一方、安積亮は妻の森谷翠に不審な人物がつきまとうことから宿を共にするも、同衾している部屋に血まみれのイソラが顕現するのだった。日露戦争の勝利から、日本政府は朝鮮への圧力を強める一方、中国への革命運動に火消しにかかり、明治の明朗さが失われていく

戦争は終わったが、安積やイソラの主人公は修羅場の連続である
森谷翠につきまとっていた男は、社会主義者であり天皇制の欺瞞を明らかにして、その爆殺を考えるほどの過激派。安積も万世一系を前提とする皇国史観に疑問を持つも、この時代にそれを口にする自由はなく、男のやり方にも同調できない
その後に遭遇するのが、日本政府が中国人留学生を締め出す問題
元来、孫文などの革命家を支援していたのに、清朝との取引から日本を革命の根拠地に使わせまいと政策転換したのだ。知り合った留学生が抗議の自殺をするも事態は変わらず、宋教仁らは日本を離れることとなるのだ
そのときに、政府の犬となって留学生を不逞の輩としたのが当時の朝日新聞!

一方、朝鮮では日露戦争後に第二次日韓協約により、朝鮮統監府を設置おかれる。朝鮮国王を皇帝とする大韓帝国に鞍替えするも、初代統監の伊藤博文が内政・外交の権限を一手に握った
とはいえ、伊藤は日本の対外進出には慎重派であり、あからさまな植民地化が列強の反発をまねくことを恐れていた
それに対して、作中の内田良平は朝鮮併合を目指して新日朝鮮人を組織し、半島を足がかりにした満蒙進出を唱える。今の満蒙は清朝の領土だが、孫文らが革命を起こして転覆させれば、日本のものになりうると考える
その政策の裏づけを得るために、嬉田教授が研究した好太王の碑文が関わってくる。古代日本が三韓征伐で百済と新羅を従えたとすれば、併合に歴史的正統性が加わるからだ
アジアの独立という大義の裏に、帝国主義がしっかり張り付いていて、この流れは大東亜共栄圏に通じるものだ。他国に身銭を切り兵士を送ることには、必ず見返りが求められる。宮崎滔天のような篤事家がいたとしても、大勢はそのように動く
内田がかつての弟子、柳斗星に襲われたことは、近代化の矛先が外へ向かうと帝国主義となる事態を象徴している


前巻 『天の血脈』 第4巻
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