『城塞』 中巻 司馬遼太郎

『真田丸』に中年の役者が多いのは、大坂の陣時点の年齢で決めたんやろねえ


城塞 (中巻) (新潮文庫)
司馬 遼太郎
新潮社
売り上げランキング: 14,360


徳川と豊臣の間に戦雲が高まるなか、不安にかられた大野治長は、高名な牢人たちを集め始める。尾張以来の秀吉の家臣・毛利勝永、黒田家から出奔した後藤基次、寺子屋の先生にまで身を落とした長曽我部盛親、宇喜多の旧臣にしてキリシタン・明石全登……そして父ともに九度山に軟禁されていた真田幸村。淀君をはじめとする首脳陣は、実質の総大将を誰か定めることができず、なし崩し的に籠城戦に突入するのだった

ついに真田幸村が登場!
大坂城に入った彼は、後藤又兵衛ともに近江まで攻め込んで、関東勢を瀬田で迎え撃つ積極策を主張するが、淀君の意を受けた大野治長はこれを承知しない。くしくも父・昌幸の予言どおり、実績のある人間が総大将に君臨しない限り、採用されない作戦だった
本作の幸村は豊臣家の恩というより、自らの功名を世に残すために戦っていて、それは又兵衛も同様。しかし、淀君や大野治長は主戦論に乗りつつも、豊臣家の保存が大前提にあって、なぜか主筋である豊臣家を徳川は潰さないという名分論を信じている。大坂城という外界から隔離された環境が、世間離れした幻想を生み出すのだ
中巻では大坂の陣が始まったため、主人公格だった小幡勘兵衛とお夏はやや後退し、幸村・又兵衛といった牢人武将たちが前に出てくる。秀頼の覚えがいいのは後藤又兵衛で、彼と関わることで秀頼はお公家さんから武士と少しずつ変貌していく
孤高の幸村に比べて、後藤又兵衛は合戦の経験のない武将や足軽たちの面倒をよく見ていて、大坂一のイケメン武者・木村重成の交流も本巻の見所だ

随所にマイナーな武将が取り上げられている
中でも異彩を放つのが、新宮行朝なる人物。紀州熊野の出であり、その祖先は源頼朝の叔父・新宮十郎行家『平家物語』にも登場する有名人で、家康すらその家柄を認めて取り立てようとするほど
しかし、その人柄は行き場のない牢人たちと同じ。ただ目立ちたいがゆえに、守りが手薄で放棄されるはずの堺へ駐留して、救援が来ると他の人間に功を取られるからと撤退してしまう
司馬は彼こそ戦国武者の典型であるとして、こういう身勝手な人間の欲求を上手く転がすことこそ、戦国時代の総大将の役目とする。そういう虚実を心得ているのが徳川家康であり、大坂の陣にはそれが務まる人間がいない。幸村にしろ、又兵衛にしろ、あくまで一軍の将止まりなのだ
もちろん、家康の子秀忠に総大将ができるはずもないから、その命が尽きる前に決着をつけなければならない。そのために、大阪方の女性陣へ阿茶の局を送り込んで、淀君の妹・常高院越しに和議を進めておいて、「惣濠」(外堀)を“総”堀として埋めてしまう。本作の家康はそれまでの律義者という評判を書き消すように嘘を吐きまくり、司馬はこの一時の行いで後世の不人気を決定づけたとする
ただし、この「惣濠」うんぬんは後付けの俗説『戦争の日本史』シリーズによると城の破却が和議の条件であって、それを巡る豊臣方からのクレームは特になかったそうだ


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