『終末の思想』 野坂昭如

よくこの内容の本がNHK出版から出たなあ


終末の思想 (NHK出版新書 398)
野坂 昭如
NHK出版
売り上げランキング: 382,297


病床の野坂昭如は、今の日本に何を思ったのか。無頼の奇才が放つ、最後の毒ガス
野坂昭如というと、管理人のぐらいの年代だと、高畑勲監督『火垂るの墓』原作者『朝まで生テレビ』や『TVタックル』で寝たり、酔っ払う変人のイメージが強い
しかし実際には、シャンソン歌手を目指して上京し、テレビの制作会社(?)で放送作家としてコントの脚本を書き続け、あの『おもちゃのチャチャチャ』の作詞も手がけていたりする。「芸能」の経歴が長いのだ
本書は半分が病床での書き下ろしで、1970年代から2010年代までに書かれたエッセイが集められている。テーマはタイトルどおり終末で、個人にとっての「死」という終末緩やかに行き詰る日本の「終末」が、書きなぐられたような言葉で語られる

本書は、単に今の風潮を批判するわけではない。戦後の日本そのものの在り方に疑問を呈する
14歳で敗戦を迎え、青春を焼け野原で送った作者にとって、その上に築かれた繁栄は砂上の楼閣にしか見えない
特に「食」の問題を大きく扱っていて、戦後にアメリカの政策と日本の困窮からパン食を受け入れ、食糧を外国に依存している状況を「属国」と表現する
いざ、世界的に食糧不足となれば、自給率の低い日本は地獄絵図のような状況にならざる得ない。作者からすると、そのような状況を放置した大人たちにつける薬はなく、食糧の争奪戦を丈夫な若者だけが生き残るとも
作者の価値観が焼け野原という強烈な体験に縛られて、それ以前の歴史が軽視する傾向はあるものの、その論陣は意外にも「保守系知識人」に近い。三島由紀夫が生きていて、東京都知事になったらどうなっていたかを妄想したり、本土決戦をやっていたほうが戦争の実感は残ったのではないか、と爆弾発言も
ただ討論番組の発言などを思い起こすと、本人が「保守系」ではなく、オブラートにくるんでお茶を濁し続けるより、筋道をはっきりさせる政治家が出てきたほうが事態が分かりやすくなるといった意味合いもあるようだ

作家として気にしているのは、メディアにおける死の描写が精神的なものに偏っていること
実際の末期がんの患者を襲う不快感、異常な感覚についてはテレビも小説も触れない。死に瀕した病人は、どこまでも本人にしか分からない孤独な状況にいるはずなのだ
それがどこかドラマ仕立ての美談に収まって、生きている人間にとって不快な部分は極力カットされている
理想とされるポックリ死もほとんどはとんでもない痛みに襲われていて、死は人間にとって永遠に恐怖なのである
さて、本書を総括すると、農業に関する認識など富野監督に近いところがあるものの、なんだか新訳リーンのサコミズが一人暴れまわっているよう(笑)。倫理的にどうなんだという発言が溢れていて、“毒ガス”と言い表す他ない作家の遺言だった


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