『天才』 石原慎太郎

まさに今太閤


天才
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石原 慎太郎
幻冬舎 (2016-01-22)
売り上げランキング: 230


政治家を引退した石原慎太郎が、かつての政敵田中角栄を振り返った小説
一人称が「俺」で角栄自身の回顧録のような体裁となっていて、最初は「俺」が誰なのか明示されないのにとまどったが、これも作者の茶目っ気。自分の臨終直前の状況など、架空の回顧録でなければ書けない箇所だろう
石原自身は政治家として自民党に所属しながらも、田中の金権政治を批判して反主流派の青嵐会を結成して、まさに不倶戴天の敵といえた
本作は田中の出自から政治家としての業績・活動、本妻と愛人の二つの家庭を巡る生々しい人間関係にも踏み込んでいて、この大胆さは作者ならではものといえる。真紀子も怖くないのだ
単行本だと分厚いわりに文字が大きく、アッと言う間に読み終えてしまった。お値段のわりにあっさりしすぎないかとは思うが、中身は濃い

田中角栄は小学校を卒業すると、家計を助けるために土建屋で働き始める。上京後も働きながら夜間学校に通う苦学生だった
徴兵され満州に配属されるが、病気で帰郷後に建築事務所を設立し、理研コンツェルン(現在のリコー)との関係から戦時中に業績を伸ばした
戦後は政界へ進出。憲法制定後の選挙で民主党から故郷・新潟で出馬して初当選する
議員としては現場で土木関係の経験を生かして、インフラ整備にまつわる法律を次々に立法していった。敗戦直後は船舶、道路をはじめ日本のインフラは徹底的に破壊されており、その再建は日本の復活に必須だった。角栄の地元である新潟をはじめ北陸地方は、首都圏から遠く離れて放置されてきた裏日本であり、経済格差を埋めるのに道路・鉄道の整備がもとめられていた
最近、開通した北陸新幹線もこうした政策の延長にあるわけで、角栄は良かれ悪しかれ今の日本を形作った政治家なのである

ロッキード事件に関しては、角栄の視点と作者の思いが交わるかたちで取り上げられている
当時の角栄は選挙のために300億円もの政治資金を集めており、5億円ははした金にしか感じていなかった。ロッキード社からは橋本登美三郎、佐藤孝行、加藤六月の三名に献金されていたが、角栄はその件に直接タッチしていない
丸紅専務の伊藤宏から受領したという、角栄の秘書・榎本敏夫の証言は、角栄が受領を認めたというガセネタを検察が新聞社に流し、その一面を榎本に見せることで調書に署名させたという裏技によるものだった
角栄の後継内閣は、直接の後継候補だった椎名悦三郎三木武夫を指名するが(椎名裁定)、三木にとって角栄は政敵。徹底した追及につながった
角栄がアメリカの石油メジャーを出し抜いて独自のエネルギー外交を展開し、ニクソン訪中に続く中国への急接近も、アメリカの警戒心を煽った
本作では直接語られないが、ロッキード事件の裏には、直接の問題になったトライスターの売り込みのみならず、対潜哨戒機P3Cの導入問題がある。軍用機の問題が露呈すると、国防に響くのみならず日米両国の体制を揺るがすものとなるので、角栄一人に留めるために白羽の矢が立ったという話もあるようだ
本作でも金権体質はモロ出しだが、政治家としての角栄はあくまで国益のために行動した。今の政治家は官僚出身かタレント、元ハーバードとか、垢抜けている反面、時勢に流されやすい人が多いので、人を動かし腰を据えた考えを持つ政治家が現われて欲しい
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