『CIA秘録』 ティム・ワイナー

分厚さの割に値段はお手頃でした

CIA秘録上CIA秘録上
(2008/11/12)
ティム・ワイナー

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(2008/11/12)
ティム・ワイナー

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9・11を受けて大きく改編を迫られたCIA。その歴史を出生から辿り、本当の姿を暴いていく。驚くべきは公開された資料と膨大な関係書類、関係者へのインタビューだけでここまで調べ尽くしたところ。オフレコの発言や匿名の証言は一切載せていないという
よく流布している反米本とは違う、硬派のジャーナリズムによるアメリカの黒歴史の検証なのだ

CIA発足の目的は「真珠湾を二度と繰り返さないこと」。そのための諜報機関で始まったはずなのだが、なぜか情報収集よりも秘密工作の割合が高くなってしまう。ちゃんとした情報がなければ、工作活動もうまく行くはずはない
そんなわけでCIAの歴史はほとんど失敗の連続であると言っても過言ではないのだ
なんでそうなってしまったかというと、どうも冷戦当初のアメリカの政治事情によるものらしい。共産圏の内情が明きらかになるごとに反共感情が高まり、エリート層にソ連が世界革命を企んでいるんのでないかという猜疑心が生まれる。そのためまだ赤ん坊のCIAに対し、赤化を防ぐために各国への秘密工作が求められるようになったのだ
実際のところソ連の国力はアメリカより薄弱であり、ソ連の脅威のイメージはモスクワ自身が作り出した幻に過ぎなかったわけだが・・・
で、この誤解は冷戦の終結まで続き、CIAは過剰ともいえる主権侵害を繰り返していくことになる
とあるCIA分析官の一人はこういう言葉を残している

「われわれはソ連のイメージを勝手に作り上げてきた。そして何が起きても自分たちのイメージに合わせてきた。情報を評価するものが犯した罪でこれに勝るひどい話はまずないだろう」(上巻p228)



CIAというと映画や小説のイメージが強くて、上手いことやっているんだろうと思っていたが、ところがどっこい。関係者からは自嘲ともいえるコメントばかりが飛び出す
対ソ連、共産圏への工作はほとんどが失敗。そもそもCIAにはソ連のスパイが溢れていて、筒抜けだったとか。せっかく確保した協力者を処刑されるわ、パラシュート降下させた工作員を全滅させるわ、ひどい有り様
秘密工作も行き当たりばったりだから、反共ならファシスト、独裁者も応援して民主的に選ばれた政府を倒すとか無茶苦茶。南米にゃ、元ナチを受け入れて秘密警察を作っている政権なんてのもあったわけだが、それとも協力。かのパナマのノリエガ将軍もその擁立にはCIAが関わっていたとか
秘密工作に傾倒する余り、情報収集はお粗末なもの。その結果、外国の諜報機関に依存する割合が高く、中東では特にイスラエルのモサド一辺倒。このためにアメリカ要人の中東観はイスラエルに歪められ、同国よりの外交政策が組まれるという

結局のところ、CIAは諜報機関としては半人前で、硬直した官僚機関に過ぎなかったようだ。組織防衛のためだけに無駄な秘密工作を繰り返すだけ。上には都合のいい報告だけをするばかりだ。そしてその実態を把握していない大統領が功名心に駆られて・・・
任務を隠すのが当然な諜報機関だけに、誰もそれをチェックしきれない。まさに嘘の上に嘘を塗り込める歴史だ
いやはや、この本には驚かされたなあ

*2010’8/30 追記
文庫版も出たようだ。しかし、1100円の“文庫”って・・・文春さんよお~

CIA秘録〈上〉―その誕生から今日まで (文春文庫)CIA秘録〈上〉―その誕生から今日まで (文春文庫)
(2011/08/04)
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CIA秘録〈下〉―その誕生から今日まで (文春文庫)CIA秘録〈下〉―その誕生から今日まで (文春文庫)
(2011/08/04)
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かなりいろんなネタが仕込まれている
ケネディ兄弟がCIAを使った秘密工作に情熱を燃やし、南米各国に積極介入。キューバ危機前からカストロ暗殺を厳命したとか。JFKの暗殺でCIAが非協力的だったのは、カストロ暗殺の一件が知れると組織の存亡に関わるからだったという
日本で注目されるべきは、岸信介がCIAの協力者だった件だろう
A級戦犯で戦前に閣僚だったとはいえ、派閥を持たぬ一介の議員がたった8年で首相にまで登りつめる。その岸に膨大な政治資金を渡し、政治家として教育したのがCIAだというのだ
そうした関係は佐藤栄作にも引き継がれ、自民党にも政治資金が流れ続ける。目的は日本の左翼勢力の伸長を止めること。こうした工作は70年代まで続けられたらしい
資金の仲介者にはロッキード社の役員(!)も絡んでいた。ということは、あのロッキード事件は・・・ということか
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クロノクルさんもすでに読まれていたとは。
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ティム・ワイナー著「CIA秘録 その誕生から今日まで」上下巻を読破!!
暑い、涼しくならない。 この炎天下に明日は、群馬県の百名城を攻略する予定。 CIA秘録〈上〉―その誕生から今日まで (文春文庫)(2011/08/04)ティム ワイナー商品詳細を見る CIA秘録〈下〉―その誕生から今...
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