『エルフの血脈 魔法戦士ゲラルト』 アンドレイ・サプコフスキ

ゲラルト「おれたちの戦いはこれからだ」


エルフの血脈 (魔法剣士ゲラルト)
アンドレイ・サプコフスキ
早川書房
売り上げランキング: 20,904


先天的な体質と魔法の霊薬によって人間離れした能力を誇る“魔法剣士(Witcher)”は、怪物退治の専門家として知られていた。“伝説の白狼”ゲラルトは政治的中立を旨とする魔法剣士ながら、ニムルガルドに滅ぼされたシントラの王女シリを保護してしまう。彼女はただの孤児ではなく、「驚きの子」と称される得体の知れない力をもっていた。その解決のために、かつての恋人トリス・メイゴールドを魔法剣士の要塞に呼び寄せるが……

海外で大人気のRPG“The Witcher”シリーズの原作小説である
主人公のゲラルトは“ミュータント”と称される変異体質と霊薬によって俊敏な能力を持つにいたった魔法剣士(Witcher)であり、すでに数々の冒険を潜り抜けて英雄として吟遊詩人に語り継がれるような存在だ
一冊だけではその能力の全ては分からないが、軽装での素早い剣技は日本人には“サムライ”を連想させるし、さらに魔法を使うとなると何やら山田風太郎の“ニンジャ”のようだ。TRPG的には、スペシャルな「ローグ」なのである
ただし、魔法剣士という職業自体が、作品世界のなかでは畏怖をもって語られるものであり、魔法院という穏健な組織をもつ魔術師に比べて、社会から浮いている。そのためか、政治的中立にこだわってニムルガルド帝国の侵略には立ち上がらず、恋人であったトリスやイェネファーとは溝ができてしまったようだ
ゲラルト個人の特徴は、何よりもモテる!!!
二人の女魔術師とただならぬ過去があったかと思えば、友達の吟遊詩人ダンディリオンが使いに出した恋人とも即座にネンゴロになるとか、ここまで手の早いヒーローがいたであろうか(笑)
しかしその反面、薬によって自らの弱さ=人間性をかき消そうとした過去があり、誰とも交わらないクールさを持っている。だが、そんな怜悧な彼も、守るべき存在を持つことで……という流れなのだが

作者がポーランド人だけあって、ファンタジーの王道的な設定を踏まえつつ、スラヴ神話の要素を取り込んで、要所に霧の立ち込めるような幻想的な光景が広がる
そのなかで変わっているのが、一見、中世ヨーロッパをモデルにしつつ、「急に走るのを止めると足にミルクが溜まる」と“乳酸”の概念を持ち出したり(直後に単語としても出る)など、現代用語を次々と持ち出してくる
世界観としても、エルフ脅威の科学文明を受け継いだ人類が排水浄化施設や工場など近代の産物が都市部にはあり、公害までも発生しているのだ
と、現実の文明史とはかけ離れているところはあるものの、ベースは確固とした中世ヨーロッパであり、近代の概念を持ち込むことで現代人にも通じるテーマにも触れている。これは正しくファンタジーの効用というものだろう

直接ストーリーに絡まない固有名詞も多く、初見では把握しがたい作品世界ながら、それを突き抜けるような文章力、先を読ませない展開があって、手から本を離れさせない。オムニバスかと思わせるようなフリで、本編に絡ませ読者にアッと言わせるのだから、作者の腕力はとんでもない
にも関わらず、全五巻の“The Witcher”シリーズは邦訳がこの一巻のみ!!
どうしてこうなった。こういう名作シリーズを出版できないと、日本のファンタジーもいずれ窒息してしまうと思うのだが


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