『東京アウトサイダーズ』 ロバート・ホワイティング

暗黒街から見る日本社会


東京アウトサイダーズ ― 東京アンダーワールド2
ロバート・ホワイティング
角川書店
売り上げランキング: 450,610


太平洋戦争終了後にアメリカ軍が進駐して以降、闇の世界でも日本とアメリカ、世界との交流が深まった。50年代から21世紀の現代まで、暗黒街で踊った紳士淑女を追う
だいぶ前に読んだ『東京アンダーワールド』の続編である
『東京アンダーワールド』の時点で膨大な資料を集めたものの、編集の段階でだいぶ削ぎ落とされたという。本書では前作で入りきらなかった、ニック・ザペッティ、児玉誉士夫、力道山といったメジャーではない、数奇な運命を辿った山師、娼婦たちが取り上げられている
不良外国人の殿堂ともいえる内容なのだが、本書のテーマは前作と同じく闇の業界から見えてくる日本人とガイジンの関係史外国人犯罪の多くはほとんど日本の暴力団絡みであり、外国人の犯罪率は日本人よりも少ない
本書で紹介される外国人犯罪者の暗躍は日本社会の闇を映し、日米の力関係の変化をも表している

今も沖縄で問題となる米兵の犯罪は、敗戦から50年代が頂点だった
特に1957年に起きた「ジラード事件は、日米安保条約を根底から揺るがした
事件は群馬県相馬ヶ原にあるキャンプ・ウィアでの射撃場で起きた。ここでは米兵たちが射撃訓練後には、地元の「金属回収協同組合」の数百人が入り、薬莢を廃品業者に売っていた。こうした慣習は、旧日本軍時代から暗黙の了解で認められていて、米兵も黙認していたという
21歳のウィリアム・S・ジラードは、訓練の最中に薬莢を拾いに来た日本人に対して発砲し、主婦の一人を射殺してしまう
敗戦さめやらぬ時期だけに世論は激昂し、それを受けた日本政府がアメリカに米兵の裁判を日本で行うことを求める要請を行った。そして、アメリカ政府はアイゼンハワー大統領の了承のもと、国務省と国防省がジラードの行動を「救いようがない」と声明を出した
しかし、これにアメリカの世論は二分し、連邦裁判所の最高裁まで昇ってようやく日本での裁判が認められた
が、大問題になったこの裁判の結末は、執行猶予4年、禁固3年という軽い処分に終わる。1995年に公開された資料によると、アメリカ政府は極秘に引き渡しの条件として「殺人罪」ではなく「傷害致死」とするように申し入れていたのだ
とはいえ、このジラード事件をきっかけに基地撤廃運動が過熱し、全国の米軍が撤退するきっかけとなる
60年近く前に、今の沖縄のような状況に日本全体があったのである

日本人の外国人観を端的に示しているのが、2000年に起きたルーシー・ブラックマン殺害事件
当初、日本の警察は観光ビザでホステスになった被害者の捜査に熱心ではなかった
しかし、被害者の父親が運動した結果、沖縄サミットで来日していたトニー・ブレア首相に届き、当時の森首相が警視庁へ介入した
そこから地下鉄サリン事件並みの捜査体制へ以降し、織原城二の逮捕につながる
そもそも日本の歓楽街では、白人女性が重宝されていた。アメリカの進駐以来、白人女性をはべらすことは客のステータスとなり、著者いわくお座敷遊びからの伝統で、必ずしも肉体関係をともなわずに高収入を得られるホステスの仕事は、外国人女性にとって魅力だった
そうした事情の一方で、著者が指摘するのは、東南アジアから来る女性たちの存在だ。白人女性の事件は過熱するのに、人身売買同然に送られてくる彼女たちについて、日本のマスコミは一切触れない。東南アジアから母国のマフィアに騙されて渡航した女性たちは、地方都市の歓楽街で奴隷同然の状態に置かれているにも関わらずだ
相手国が先進国か途上国かで、日本政府の対応は様変わりする。それは日本人の価値観をそのまま映している。アジア経済の台頭で、はたしてどこまで改善されているだろうか


前作 『東京アンダーワールド』
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