『ブッシュの戦争』 ボブ・ウッドワード

対テロ戦争の答えはいまだ見えず


ブッシュの戦争
ブッシュの戦争
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ボブ ウッドワード
日本経済新聞社
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9.11同時多発テロ事件から、ブッシュ政権はいかなる過程で対テロ戦争を計画したか。ウォータゲート事件をスクープした「調査報道」のレジェンドが、ブッシュ政権の要人を取材してその全貌を明らかにする
『攻撃計画(Plan of Attack)』イラク戦争への道程に焦点が当たっていたが、その前段である本書はアフガニスタンのタリバン政権への攻撃を扱っている
ラムズフェルド国防長官のように9.11直後にイラク攻撃を意識する人間はいたものの、他の“ネオコン”チェイニー副大統領、ポール・ウォルフォウィッツ国防副長官はさすがに今の段階で結びつけるのは無理筋であり、アルカイダへの攻撃やテロ対策に集中すべき考えていた
コリン・パウエルやアーミテージの国務省の元軍人コンビと大統領の関係も、タリバン政権の転覆まではさほど問題ではなく、コンドリーザ・ライス大統領補佐官が見事なつなぎ役を果たしてた
9.11の報復であるアフガン戦争も、アフガンの歴史背景や周辺諸国の反応を重視して単独行動主義(ユニラテラリズム)に陥らない配慮がなされていたのだ

アフガニスタンのタリバン政権への攻撃で問題になったのは、アルカイダとタリバン政権の関係が不明なこと。アルカイダと一体化しているのが、最高指導者オマル師の周辺だけなのかが不鮮明で、当初はビンラディンとアルカイダの追討への協力がタリバン側に打診された
対抗勢力である北部同盟には主要民族のパシュトゥン人が含まれておらず肩入れし過ぎるとパシュトゥン人全体を敵に回す危険がある。タリバン政権から距離を置くパシュトゥン人の部族や後に大統領となるカルザイ氏の勢力を取り込む工作が行われた
北部同盟には首都カブールへの進撃を遅れさせ、北部の要衝であるマザリシャリフ攻略を優先させ、カブールの統治は国際的な枠組みでの管理が望まれた。アフガンにはイギリス、ソ連と外国の勢力による支配へ頑強に抵抗した歴史があり、アメリカが前面に立つことは避けたかったのだ

軍事的な問題としては、空爆を加えるにしても拠点となる空港が必要とともに、パイロットを救出するための特殊部隊を配置せねばならず、北部への攻撃にはウズベキスタンやタジキスタンと交渉せねばならない。ウズベキスタンはロシアと対立する傾向があり、タジキスタンは親ロシアなので、これまた一方に肩入れし過ぎるわけにはいかない微妙な外交が必要となる
南部への空爆は空母からのみとなり、か細いものとならざる得なかった。パキスタン国境付近の山岳地帯の制圧には限界があり、後のタリバン復活につながっていく
とはいえ、300名余りの特殊部隊とCIA工作員が北部同盟の支援、パシュトゥン人への工作に潜入して着実に現地勢力の協力者を増やし、大規模な地上軍の派遣なしでタリバン政権に首都カブールを放棄させることに成功した
本書のなかの範囲ではアフガン戦争は緻密な外交、軍事作戦、秘密工作で、最低限の投資・損失でアメリカが成果をあげたものとされている。イラク戦争のガバガバさに比べると、確かに信じられないぐらいリスクが管理されていた
ただ、その後のアフガンではタリバン政権が息を吹き返し、オバマ政権では数万人の米軍が駐留せねばならないようになった。ビンラディンは死んだけど、何が最善手だったかはイラク戦争に比べはるかに難解である


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