『小さいおうち』 中島京子

昭和初期のことでも、時代小説という区分にあてはまる気がした


小さいおうち (文春文庫)
中島 京子
文藝春秋 (2012-12-04)
売り上げランキング: 6,749


昭和初期、山形から女中奉公に出たタキは、東京で美しい時子奥様に出会う。その機転を気に入られた彼女は、時子奥様が再婚した平井家へもついていくことに。平井家の旦那様は、お見合いの約束どおり赤い屋根の洋風の家を建てて迎え、華のある中流生活が始まった。しかし、大陸の戦争が長期化したことから、旦那様の会社にも暗雲が立ち込め、時子奥様にも男の影が見えて……

山田洋次が映画化した直木賞作品
戦後にタキが平井家の女中時代を振り返る回想と、タキの甥・健次による裏付け取材の二編からなっていて、タキの回想が大半占める。タキの口から語られる戦前の中流家庭の姿が、とりもなおさず本編である
戦後教育を受けて戦前=戦争の暗黒時代と捉える甥の健次に対して、タキの回想では日中戦争が始まってもしばらくは戦勝ムードであり、その長期化と国家総動員体制の進行ともに徐々に物資が欠乏していくリアルな様子が描かれる。タキとその周囲の人々に戦争が牙を剥いたのは、東京の空襲と疎開の本格化であり、戦前を大人として送った世代の体験を小説という形で伝えるのが、表のテーマなのである
時子の不倫を核とする女たちのドラマは、最後のクライマックスに絡むものの地味であり、表を食うほどのパワーは感じなかった。タイトルのように、小さな玉手箱のような小説なのだ

映画版との違いは、小説ではタキの時子に対する同性愛とも思える思慕が強調されているところだろうか
映画だとそこが不明瞭で、タキは板倉へ好意を持っていたのようなシーンもあった気がする(気のせいかもしれないが)
小説では吉屋信子の作品から、「男女が恋人となる第一の道、同性を好きとなる第二の道、そのどちらでもない第三の道がある」と引用されていて、時子の親友である睦子から、タキは「私と同じように第三の道を生きるようね」と言われてしまう
睦子は時子に熱を上げていた女性の話を持ち出したように、おそらく女学生時代には時子に惚れていて、タキの気持ちを見透かして言ったとも解釈できる
タキの回顧録が健次の取材でひっくり返されたことから、体験者の話から戦後の戦争イメージが戯画的なことを指摘しつつも、返す刃で体験者の話もまたその主観や事情により誤解や虚偽がありうることを示したことが高く評価されているのは分かる
ただその割りに、影のテーマが上品に影のままで終わったことに、少しモヤっとしてしまった


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