『多重人格探偵サイコ』 第1巻・第2巻

作品の初出は1998年で、実に18年前。時が経つのは早い


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大塚英志・田島昭宇コンビによる快楽殺人ミステリー
主人公は多重人格者の元刑事・雨宮一彦で、第1巻で刑事をやめて私立探偵になった経緯が触れられる
女性の死体で遊ぶ殺人鬼・島津に見初められて、彼女を殺されたことで多重人格が出やすくなり、自覚していた人格「小林裕介」とも異なる、“サイコ”な「西園信二」が姿を現すのだ
サイコ西園の人格は殺人鬼に親近感を持たせるようで、島津は雨宮の彼女を殺すことでそれを呼び覚まそうとして……
ローカル局に勤める眼帯のカメラマン・渡久地義指をつける女探偵・伊園磨知、数々の異常者たちとどれも濃いキャラクターばかりで、完全にまともな人間などいないという精神医学の世界観である
後半にはユナ・ボマーをモデルにしたようなルーシー・モノストーンなるカリスマがキーワードとして浮上。人の脳を鉢植えにする殺人鬼・上野達もそれに触発される
事件の解決(?)に雨宮の新たな多重人格が事前に犯人に接しているというご都合が気になるが、それには雨宮自身や捕まったサイコたちがひとつの計画に利用されているのではないか、というフォローがなされている

第2巻では、謎の組織に属するという男が女子高生たちに暗示をかけて、自殺させる事件を起こす
その事件を追ううちに謎の男を発見するも、雨宮はサイコ西園と化して轢き殺そうとする。男は伊園を人質にとって姿を消すが、この件をきっかけに雨宮は第四の人格「村田清」として、男に上野達を引き渡していたことを思い出す
そればかりではなく、雨宮が少年時代にサイコとして目覚め、施設の女性と折り合いの悪かった子供たちを殺害し、施設ごと焼き払ったことにも触れられる
謎の男は雨宮にそれを思い出させるために、生き残っていた本物の「村田清」に事件を再現させるのだ。雨宮は本当は第二の人格である「小林裕介」であり、本物の雨宮少年は事件で焼死していた……
多重人格と精神異常にからめ、雨宮や殺人鬼たちに共通する目のバーコードから、隠された計画という陰謀も絡み、いつでも話をひっくり返せる要素があるので油断ができない

この作品には死体と残虐表現が満ちている
第1巻にはその点に触れた大塚英志のあとがきがあり、「少年誌にこんなに死体を載せていいのか」と編集部ともめた内幕が明かされている。原作者としては、「少年誌だからこそ『死体』という表現をしっかり載せるべきではないか」という主張であり、話の上だけで人の死に触れ「死体ひとつ」描かないのは「死の記号化」だとする
吉本隆明との対談で、エヴァンゲリオンを擁護したことにも通じる論理である。子供のためにキワモノを見せるべき時もあるというわけだ
ただし、本作は原作者の主義主張と同時に、死体で戯れるエログロの娯楽が厳然としてある。ケンシロウがモヒカンで遊んでいるようなことが漫画表現の歴史にもあるわけで、それだけにならないような“何かが”が作品になければならないのだろう(北斗にはそのぶん、硬派のドラマが展開されていた)
精神病やマインドコントロールは、近代的自我の仮定を揺さぶる「近代主義」にとって危ういテーマなので、「戦後民主義者」がどう料理したか注目だ


次巻 『多重人格探偵サイコ』 第3巻・第4巻

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