『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』 エマニュエル・トッド 

イギリスは離脱が正解?


「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
エマニュエル・トッド
文藝春秋
売り上げランキング: 16,364


ユーロ圏はドイツに支配されている!『帝国以後』の著者がヨーロッパで起こっている真実を告げる
本書は『帝国以後』のエマニュエル・トッドフランスの雑誌やインターネットサイトで受けたインタビューを集めたもの。インタビューといっても、質疑応答が続くわけではなく、著者が独白のように持論が展開されていて、エッセイのように読めてしまった
著者はユーロ圏が誕生することでヨーロッパ諸国が相互に保護することを期待したが、現実に起こったことは正反対。ユーロという統一通貨と経済障壁が撤廃されたことから、経済大国である統一ドイツ欧州中央銀行の本店がフランクフルトにあるように、自国に合わせてユーロ圏の経済が再編されていったのだ
こうした視点からヨーロッパ地図を見直すと、バルト三国にウクライナを巻き込んだ地域は全盛期のナチスを上回る事実上の「第四帝国なのである!
もっとも、著者は陰謀論的にドイツを批判したいわけではなく、あくまで祖国フランスの覚醒を促すべく、過激な政治的発言をしているので、そのへんは割り引いて読むべきだろう

特筆すべきはロシアとウクライナの紛争の読み方だ
著者によれば、戦争を仕掛けているのはロシアではなく、ドイツだという
ウクライナは第一次大戦や独ソ戦もそうであったように、地政学的にはドイツとロシアがぶつかり合う場所である
ドイツは東西統一の際に、共産圏の知的レベルの高い国民を安価な労働力として動員することに成功した。ユーロの拡大にはこの経験が生かされて、ドイツの大企業は東欧に工場を立てて経済的に取り込んでしまっているのだ
そしてウクライナはドイツ資本にとって、東方最後のフロンティアともいえる
ウクライナの中でユーロ入りを望むのは西部の人々であり、大多数のウクライナ人は明確な意思表示をしていない。民主主義の伝統も薄く、現状のウクライナは解体途上ではないか、というのが著者の読みだ
ロシアにとってウクライナ紛争とクリミア併合は、欧米からのイメージとは逆に巨人の復権とする。プーチン政権下で乳児死亡率が劇的に改善し、出生率が増加に転じていて、かつての国力が回復しつつあるのだ
ロシアの政治体制が著者が好むわけはないが、かの地では「権威主義的デモクラシー」が定着してしまっている。欧米型民主主義が万能と思うのは、欧米の傲慢であるとする

祖国フランスには、ドイツの暴走を止めるバランサーの役割を期待している
新自由主義的な前任者サルコジは論外として、現大統領オーランドもドイツの金融支配を打破しない点で、「ドイツ副首相とまで言い切ってしまう
ユーロに期待された、諸国民がそれぞれの価値を持ちうる保護貿易と、統一通貨のユーロの廃止(!)ないしはそれに匹敵する金融政策の転換につながるように働きかけるべきであり、銀行のお先棒を担ぐのはやめるべきだとする
中国に関しては、「経済成長の瓦解と大きな危機の寸前」にいるとする。他の論考では「軍事力についてもそれほどの存在ではない」として、空母を今さら購入しても唯一の空母同士の海戦を経験した日米には及ばないと見ているようだ
日本については深く扱っていないが、震災後の東北を取材して「日本人の伝統的社会文化の中心をなすさまざまなグループ――共同体、会社など――の間の水平の連帯関係」が機能しなくなった政治制度に代わって、地域の再建・復興を支えたとして、伝統文化が大切である好例として取り上げている
ドイツとの比較では長子存続という共通点を持ちつつも、「日本の文化は他人を傷つけないようにする、遠慮するという願望に取り憑かれている」「ドイツは同じ貿易黒字国でも、技術の面では日本に及ばない」とも。日本人への警告というサブタイトルに見合った内容ではないが、EUのイメージが一変する一書である
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