『湖中の女』 レイモンド・チャンドラー

前提を疑うのは難しい


湖中の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
レイモンド チャンドラー
早川書房
売り上げランキング: 43,036


化粧品会社の社長デレイズ・キングズリーは、妻クリスタルが行方不明になったとマーロウに捜索を依頼してきた。メキシコで結婚するというクリスタルの電報に対して、その情人であるレイバリーは否定する。逗留先のひとつと考えれたキングズリーの別荘には、管理人ビル・チェスと話すのも束の間、湖に沈む女性の水死体を発見する。彼女は管理人の妻ミュリエルと思われたが……

シリーズ中で一番だまされた(苦笑)
いかにも裏のありそうな依頼人の社長に、美人の女秘書プロのジゴロ、その向かいに住む麻薬医師、その家を張る不良警官、と一癖ある人間が出過ぎて、あまりにいろんな筋が考えられてしまう
そして、前半で一幕と考えられた事件が、想像とは違う形で蘇ってきて、終盤の大どんでん返しにつながるとか、到底分からない
誰がどの人の顔を知らないのか、この認識の違いが大仕掛けの源となっている。マーロウくんの認識力が途中まで読者と同じラインなのもミソで、ほんの最後で一気に抜き去る。この切れ味がたまらない
洗練された文章といい、シリーズ最高といってもいい作品だが、案外名前が上がらないのは、終盤のピンチをみっともない形で乗り切るなど、小説らしい作為が見えてマーロウが引き立て役になりがちだからだろうか

本作は1943年に発表された作品である
「どうせ、もうすぐ兵隊にとられる」と衝動的に食ってかかる警官に、道路に壕を掘る作業員、山のダムを警備する陸軍兵士など、戦時体制を思わせる光景がいくつか出てくる
チャンドラーの長編小説は元々、初期に書いていた短編小説からイメージを膨らませたものだから、無理に書き込む必要はないわけだが(1942年の『高い窓』にはそれほど戦時色は強くない)、1943年という年がそれだけアメリカ社会に戦争がのしかかっていたということなのだろう
訳書あとがきにも、チャンドラーの友人の言葉を引いて、表向きは普段の生活を保とうとしている人々もどこか戦争の抑圧を受けて、衝動的になっているという。マーロウの相手になるブロンドが出てこない、と
確かに、主要な犯人たちは理性が薄い。ずる賢いが強盗のようなのである


関連記事 『高い窓』
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

コメント

コメントの投稿

非公開コメント


(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
カテゴリ
SF (22)
RSSリンクの表示
リンク
FC2 Blog Ranking
ランキング
アクセスアップ!?
検索フォーム
はてな
この日記のはてなブックマーク数
タグランキング

サイドバー背後固定表示サンプル

サイドバーの背後(下部)に固定表示して、スペースを有効活用できます。(ie6は非対応で固定されません。)

広告を固定表示させる場合、それぞれの規約に抵触しないようご注意ください。

テンプレートを編集すれば、この文章を消去できます。