『真田太平記 (一) 天魔の夏』 池波正太郎

大河ドラマとは違う味


真田太平記(一)天魔の夏 (新潮文庫)
池波 正太郎
新潮社
売り上げランキング: 7,387


天正十年(1582年)三月、強盛を誇った武田家は、織田・徳川連合軍の前に滅びようとしていた。信濃の高遠城では、武田家の意地をかけた抵抗が始まろうとしており、新兵同然の向井佐平次もまた長柄足軽として最後の戦いに挑むはずだった。しかし、真田忍びの女・お江によって助け出されてしまう。佐平次の父と真田忍びの頭・壺谷又五郎が格別の因縁があるというのだ。一方、真田家の当主・昌幸は武田勝頼・信勝親子を救い、信玄公のご恩に応えようとするが……

真田家とその忍びを主役として全12巻の大長編歴史小説
池波正太郎はデビュー作から真田家に関わる小説を発表していて、本シリーズは『鬼平犯科帳』『剣客商売』と並ぶ長編シリーズである
出だしから突拍子がない。向井佐平次が決死の戦いに望む前夜、女忍者・お江がその童貞を哀れんでその手で乳房を掴ませるところから始まるのだ。その後、高遠城での合戦に移り、一兵卒としての佐平次の戦いが克明に描かれる
いきなり真田昌幸や武田勝頼を登場させず、読者の視点を一人の足軽から入らせるので臨場感がハンパない。しかも負け戦確定なので、生き残ると分かっていてもどう転がるかハラハラするばかりだ
こうしたリアルな合戦描写があった上で、忍者同士の戦いを見せられるので彼らの超人ぶりが引き立つ。読者は佐平次視点なので、文字通りのヤムチャ状態におかれる(笑)
その後に、忍びたちを使う立場の源次郎(いわゆる幸村)が登場し、「この人、どれだけ凄いの」と思える仕掛けとなっていて、もう完全に作者の手のひらの上に転がらせていくのだ

今年の大河ドラマ『真田丸』も意識していると思われる本作だが、ホームドラマを標榜するドラマとは当然ながらだいぶノリが違う
昌幸の長男・源三郎信之は、人柄のいい凡人ではなく、むしろ昌幸に似た親にすら腹の内を見せぬ政治家タイプ。自分の意見を昌幸が素直に取り上げないのを知って、お気に入りの源次郎を通して進言する策士である
一方の源次郎は、大河のように「本当に十代か」と疑わせる老練さを見せる一方で、年の近い佐平次に対して開けっぴろげに振舞う。一巻までのところ裏表のない豪傑タイプなのだ
親父の昌幸は草刈民雄の顔が浮かぶ狸ぶりを見せるが、夫婦はまるで円満ではない。正室の山手殿とは不仲で、その妹で家臣に嫁いだ人妻と隠し子を作る始末。源次郎の母もはたしてと匂わせる伏線もある
皆がいちおうに悪を持つ池波作品ならでは味であろう

忍者が無双していきそうなシリーズながら、真田家の歴史については詳細に記されている
真田昌幸がこだわる上野国の沼田城は、先祖伝来の土地ではなく、実は彼が一代で奪い取ったもの。それも1578年にそこを領有していた沼田氏から謀略で奪い取ったもので、沼田の嫡男・平八郎が奪還の兵を上げたときには、騙まし討ちで討ち取っている
それを原因に上杉、北条、徳川と渡り合うことになったことを考えると、渡しちゃったほうが楽になるのでは思えるのだが、そこで頑張ってしまうところに昌幸自身のプライドと鼻っ柱を感じてしまう
大河だと「先祖伝来の美しい土地を守るため」(キリッ)とまとめられてしまう彼らの戦いだが、所領の護持より御家の興隆をかけた大博打だったのだ


次巻 『真田太平記 (二) 秘密』
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