『大いなる眠り』 レイモンド・チャンドラー

「うふう」は「イヤオォ!」に置き換えよう


大いなる眠り (創元推理文庫 131-1)
レイモンド・チャンドラー
東京創元社
売り上げランキング: 63,952


私立探偵フィリップ・マーロウは、病身のスターンウッド将軍から依頼を受けた。油田で財を築いた将軍には二人の娘がおり、下の子のカーメンに脅迫状が届いたのだ。マーロウは脅迫者のガイガーを調査しその屋敷を突き止めるが、そこからは銃声が響く。中ではガイガーの死体の側に、全裸のカーメンがいた

レイモンド・チャンドラーの記念すべき処女長編
最初の筋は将軍の娘への脅迫事件で、そこからエロ本業者ガイガーの殺人へ進み、ガイガーに部屋を貸すマフィアであるエディ・マース、ガイガーのエロ本をパチったゆすり屋ジョー・ブロディと、一癖も二癖もある人物が一気に絡んでくる
依頼の一件は片付いても、もう一人の娘ヴィヴィアンの旦那、ラスティ・リーガンがどこへ行ったかの謎が残り、マーロウは年老いた将軍を惚れさせた男がどれほどの者か確かめるべく、探し求めるのだ
最初はプロとして仕事に取り組みつつ、その後は一転して個人的な動機で、無償かつ命の危険にさらされる行動をとる
このきわめてヒロイックな二段ロケットが、周到に隠蔽された真実にたどり着かせる。主人公も読者も半ば諦めたところで、真相が判明するのでビックリである。衝撃の真実とはタイミングが衝撃的なのだ
まあ、タイトルを冷静に思い返すと……ね

一番印象的なのが、双葉十三郎の謎訳だったり(笑)
本書がアメリカで出版されたのが1939年で、日本で訳書が出されたのはチャンドラーの没年である1959年。同ジャンルの翻訳が少なかったのか、アメリカ社会の情報が少なかったせいか、はたまた当時の日本の読者に説明するには適当な語彙がなかったのか、今から読むとユーモア溢れる単語が続出だ
全裸のカーメンが「着物」を着ることになったり、拳銃の喩えに「パチンコ」を連呼したり(せめて「ハジキ」)、「百雷の効果」など漢詩的なエッセンスもある
もっとも謎なのが、マーロウが否定とも肯定ともしないときに発する相槌「うふう。プロレスラー中村真輔の「イヤオォ!」にも通じそうなこの台詞が、英語でいったいどういう単語があてはまるのだろうか
双葉十三郎について調べると、年代物の訳にも納得。1910年生まれの大正の男なのだ
映画評論家として古くからSFやホラー、B級映画を正当に評価したことで知られ、アメリカのハードボイルド小説を日本に持ち込む第一人者でもあったようだ
他の人の翻訳が出なかったのは、こういう先輩に対する遠慮が業界にあるからだろう。香ばしいものが好きな人でない限り、村上春樹訳のほうがお薦め(未読ですが)


大いなる眠り (ハヤカワ・ミステリ文庫)
レイモンド チャンドラー
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