『天と地の守り人 第3部 新ヨゴ皇国編』 上橋菜穂子

感動のフィナーレ


天と地の守り人〈第3部〉新ヨゴ皇国編 (新潮文庫)
上橋 菜穂子
新潮社
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バルサは戦火の迫る新ヨゴ皇国へと戻った。懐かしの四路街は防衛を放棄されていて、町衆は用心棒を集めて自衛しようとしていた。バルサは戦争で封鎖された国境が解けると読み、町衆にロタ王国への亡命を進める。その一方、チャグムはロタとカンバルの軍勢を連れて都・光扇京を目指し、それを知らないシュガは陸軍副将カリョウと組んで帝を弑してタルシュへの降伏を模索していた

尻上がりの大団円だった
シリーズ始まって以来の大規模戦闘は、迫力ある活写で描かれた。タルシュ帝国が200年戦わなかった新ヨゴ皇国とどう違うのか、投石器などを生かした戦術で具体的に示されている
その一方で、海を越えて大軍を送り込むタルシュ側の弱点がきちんと突かれていて、ファンタジーなりに世界大の戦略が練られている。いや、第1部で突っ込みを入れたことがお恥ずかしい
ここまでちゃんと考えられたファンタジー物がいくつあったろうか。ほんと、凄い作家さんである
なおかつ、放棄される町や焼き出される難民、数合わせで徴兵される草兵たちと、戦争の悲惨さがしっかり押さえられている。まさか、タンダがあんなことになるなんて……
前回ポンコツと書いたチャグムも、陣頭に立って奮戦し初陣を飾る。顔に刀傷を負ってからの彼は、国を背負う覚悟を固めて背筋がしゃんと伸びきっている
最終巻にして、もはやバルサに支えられる存在ではなくなったのだ
<守り人>シリーズは少年の成長物語としても、完璧に終結した。『天と地の守り人』の三部作は、過去関わったキャラクターたちが総登場してチャグムやバルサに絡む展開で、ファンは感涙、シリーズの幕に相応しい内容だった

シリーズの総括をしよう
一番関心したのは、キャラクターの力量や器が等身大に徹していることだ。槍の達人であるバルサにさえ生傷が耐えず、多人数や組織相手には死の淵に立たされてきた
チャグムの持つ不思議な力も、主人公補正というより負債の意味合いが大きく、可愛い彼を作者はまったく甘やかさなかった。あえて言えば、帝である父の死に立ち合わせなかったことぐらいだろうか
敵に有能な人物も多く、強さを見せ付けて圧倒する場面は少なかった。敵役を安易に貶めずに、あくまで相手なりの立場・理由で動いていることを踏まえていた
世界観は日本的な古代王朝の横にインド的大国があるとか、泥縄式で整合性がとれないところはあったものの、この『天と地の守り人』三部作をもって整理された
新ヨゴ皇国には、ヤクー=縄文人の住む土地に稲作文化のヨゴ人=弥生人が移住する古代日本の構図がモデルにあって、チャグムへの代替わりは二重の社会を統合するものといえる
また戦争後に神聖で超然とした君主から、庶民へ姿を見せる人間としての君主という変化は、近代日本の天皇制の在り方を連想させる
作者にそうした意図をなさそうなものの、歴史資源が注ぎ込まれているので自然にそう観えてくる。<守り人>シリーズは一流のファンタジーであり、時代小説なのである


前巻 『天と地の守り人 第2部 カンバル王国編』
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