『天と地の守り人 第1部 ロタ王国編』 上橋菜穂子

タンダが東出昌大というのはどうやねん


天と地の守り人〈第1部〉ロタ王国編 (新潮文庫)
上橋 菜穂子
新潮社
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タルシュ帝国に連れ去られたチャグムは、新ヨゴ皇国を臣従させるというラウル皇子の申し出を断り、海へ飛び込んだ。新ヨゴ王国では国葬が営まれたが、用心棒稼業を続けるバルサのもとへ、ヨゴ人の使者が来る。ロタ王国に流れついたチャグム皇太子を探し出して欲しい、と。バルサはロタ南部の港ツーラムへ向かうが、そこはサンガルの海賊、タルシュ帝国の密偵、ロタ王国の処刑人が入り乱れる陰謀の盛り場だった

実写化の勢いで積読から取り出してみた
読んでみると、なんで積読にしていたかのかが不思議なくらい引き込まれた。宮廷のシュガ、ヤクーの村から徴兵されるタンダが少し挟まるものの、ほぼバルサの視点で動いていき、チャグムは最後あたりまで出てこない
バルサの、チャグムを助けたい、無事を確認したい気持ちが小説全体にストレートに貫かれていて<守り人>シリーズのスピリットが純粋に表現されている
彼女はレジェンドともいえる槍の達人だが、敵も一流のプロばかりでまったく油断ができない。毒を盛られたり、囚われたところを火責めにあったり、と罠にはめられる局面も多く、危機一髪の連続
前巻に続いてキャラクターを愛すればこそ、谷へ落とす厳しさが彼らが輝かせている

積読にしていた理由は、タルシュ帝国の登場で史実の歴史風景と重ならなくなってきたからだ
管理人の勝手といえば勝手だが(苦笑)、新ヨゴ皇国を古代の日本になぞらえていたので、隣国にインドくさいロタ王国が出てきたところあたりから、少し微妙だった。遊牧民と境界を接していると、新ヨゴ皇国の社会は生まれないと思ったからだ
普通のファンタジーだとこの程度の荒唐無稽は気にならないが(むしろ、ファンタジーだから許されることだ)、文化人類学という基礎から精緻な世界観を築かれた同シリーズだと立ち止まってしまう
そこにタルシュ帝国が登場して、<普遍的帝国>とそれに対抗する<諸国民>という文脈が持ち込まれると、アメリカ一強時代のグローバリゼーションへの批判としては正しくても、古代の日本からはあまりにかけ離れてしまうのだ
先進地域の制度を適当に取り入れたり、距離を取ってきたのが、日本という国の歴史である

とはいえ、巻末の萩原規子、佐藤多佳子との鼎談で、こうした違和感は霧散した。作者はあまり先のことを考えずに世界を構築していたのだ
『精霊の守り人』の筋は、燃え上がるバスから女性が子供を助け出す映画を観て思いついたらしく、そこから必要に応じて設定が生まれていったという。カンバル(モデルは中央アジア)やサンガル、ロタなどもその都度、創造されたもので、元々大きい世界を用意していたわけではない。案外、泥縄式なのだ
そうなると、元寇でも大陸から近場の列島までであり、南半球から北半球へ大陸間戦争は軍事技術的に近代に入らないと無理だろうという批判は、あんまり意味がない気がした
物語の最終章として、「強大な帝国に対抗しようとする皇子と女用心棒というシチュエーション、燃える!」でいいのだ


次巻 『天と地の守り人 第2部 カンバル王国編』
前巻 『蒼路の旅人』
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