『虎よ、虎よ!』 アルフレッド・ベスター

今年こそ、優勝


虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)
アルフレッド・ベスター
早川書房
売り上げランキング: 14,621


25世紀の未来。人々はジョウントと呼ばれる瞬間移動の能力を身につけ、世界は大きく変貌した。瞬間移動の超能力は距離の概念を変え、社会は搾取と犯罪に満ちて、地球を中心とした内惑星連合と、土星・木星の衛星を中心とした外衛星連合との惑星間戦争をも生み出した。この情勢のなか、輸送艦「ノーマッド」船員ガリー・フォイルは、通りかかった船に見捨てられ、奇怪な惑星の住人に虎の刺青を彫られてしまう。男の世界への復讐が始まった

なんともいえない、カオスな小説だった
冒頭はロビンソン・クルーソーのような漂流する男の物語である。近づいてきた宇宙船に見捨てられたために、とある惑星の原住民(!)不思議な刺青を彫られてしまう。顔を奪われた主人公は、見捨てた輸送船とその船員へ復讐するために地球へと向かうのだ
基調は復讐譚なのだが、“部”が変わるごとに主人公の人格が変貌していく
第一部では、船そのものに復讐しようとする狂人であり、地下牢でジスベラという女性に会うことでようやく知恵を身につけ始める。それまで、まるで因果関係を考えない復讐鬼なのである
第二部では復讐の対象を船の関係者となり、大変な努力をはらってサーカスの団長に扮して探索していく。身体をサイボーグ化することで、超絶な戦闘力を身につけ、まるで映画『マトリックス』のような戦いぶりを見せる。このあたり、作者がアメコミのストーリーを担当していた経験がうかがえる
しかし、星間戦争の激しさと宇宙船「ヴォーグ」が自分を見捨てた理由を知ったことで、復讐の空しさを覚えて、自分が取ってきた悪漢ぶりに罪悪感を覚えるのだ
正直、数冊分の小説のプロットを放り込んだ濃縮ぶりに、読者は消化できないのだが(苦笑)、そのジェットコースターの展開、あっと驚く伏線、主人公の辿りつく境地には圧倒される。おそらくシリーズ物にするのが、最善手だったのではなかろうか

瞬間移動の能力“ジョイント”は何を表しているのだろう?
本作のテレポテーションは科学技術ではなく、人間に隠された精神の力とされていて、作者が直接何かに喩えているとは思えないが、それによって起こされる社会変化は現代的である
ジョイントにより、社会がより個人の意志に引きずられることとなり、そのスピード感に人間たち自身が振り回されていく
個人差はあれど、誰もが思い描く場所に向かう能力は、誰もが世界に言葉を発せられるネット社会に通じるし、犯罪者天国であるジョイント社会の刹那ぶりは、匿名を楯に暴れまわるネット犯罪に似ている
人は新しい力を手に入れた時に、どう振るうのか。SFの基本的命題が貫かれているのだ
ただし、主人公は禁忌ともいえる「新しい力」を民衆へ分け与え、独占しようとする特権階級の人々の選民主義を批判している。大衆を圧倒的に信用してしまうのだ
今のネット社会は、その「新しい力」を無秩序に振りまいた結果ともいえて、小説ほど世界は上手く回らないのである
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

コメント

コメントの投稿

非公開コメント


(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
カレンダー
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
カテゴリ
SF (22)
RSSリンクの表示
リンク
FC2 Blog Ranking
ランキング
アクセスアップ!?
検索フォーム
はてな
この日記のはてなブックマーク数
タグランキング

サイドバー背後固定表示サンプル

サイドバーの背後(下部)に固定表示して、スペースを有効活用できます。(ie6は非対応で固定されません。)

広告を固定表示させる場合、それぞれの規約に抵触しないようご注意ください。

テンプレートを編集すれば、この文章を消去できます。