『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史 2』 オリバー・ストーン&ピーター・カズニック

誰が核戦争を止めたのか


オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 2: ケネディと世界存亡の危機 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
オリバー・ ストーン ピーター・ カズニック
早川書房
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冷戦時代、アメリカはいかに世界に対して来たか。その帝国主義を厳しく指弾する
2012年にアメリカで製作されたドキュメント番組の関連本。番組は50分を10本に分けて放映されたらしく、『映像の世紀』ばりの大作だったようだ
本書では、第二次世界大戦後、トルーマン、アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン、ニクソンの五人の大統領と世界政策を取り上げる
ソ連は独ソ戦との傷跡により、アメリカと対峙する国力など到底なかったが、その政治宣伝とアメリカ国内のスパイの存在に過剰反応し、核保有の優位が生きるうちにとアメリカは自ら冷戦へひた走っていく。実際のスターリンは一国社会主義が基調で、ソ連防衛のために衛星国は作るものの、世界革命など意識していなかった
ミサイル・ギャップに代表されるソ連への誤解から、過剰な核兵器の開発、ドミノ理論による第三世界への介入に及び、冷戦を前提にした軍産複合体が膨張していく。そして、その動きを最高権力者すら止めることはできず、ダラスの悲劇、ベトナム戦争を招くこととなる

核保有の優位をもってソ連に対抗するトルーマンの政策は、アイゼンハワー政権へも引き継がれていく
退任後の演説で「軍産複合体」の存在を告発したアイゼンハワーからは意外だが、彼とジョン・フォスター・ダレス国務長官のもとで核兵器と介入主義の冷戦政策が展開されるのだ
ただしソ連をはるかに上回る核戦力の整備は、軍産複合体に煽られたというわけではなく、むしろ膨れ上がる軍事費を押さえ込むためのものだった。費用対効果で選択されたというのが、いかにもアメリカらしい
水素爆弾の実験は推進され、1954年にビキニ環礁による実験で、日本の第五福竜丸が被爆することとなる。そして、高まる日本の反原子力運動を鎮めるべく、「原子力の平和利用」と称して日本への原子力発電が推進されていく
アイゼンハワー政権下のCIAは1953年、石油産業の国有化をはかるイランのモザデク政権の転覆に乗り出した。民主的な選挙で当選したモハンマド・モザデクは、国内の油田を独占するイギリスの石油会社「アングロ・イラニアン石油会社」から利権を奪い返したが、既得権益を保ちたい欧米との対立からソ連へと接近したのだ
アメリカは前皇帝の皇子を推し、世襲の独裁体制を復活させた。モザデクは自殺したが国民の人気は根強く、後年のイスラム革命のさいにその写真が掲げられた。イランの反米感情はこのときに植えつけられたのだ
アイゼンハワー政権下での副大統領が、後の大統領リチャード・ニクソンである

ケネディもまた当初は、アイゼンハワーの冷戦政策を引き継いだ。就任以前には、フルシチョフとの雪解けを妥協的と批判しさえしていた
ベトナムへは軍事顧問団を送り、ソ連へ近づくキューバの革命政権に対してはカストロ暗殺計画まで立てた
しかしキューバ危機を通じて核戦争の危険を体験し、フルシチョフとの間に生まれた信頼関係から、ソ連との共存路線と冷戦政策の転換を決意する。本書で描かれるケネディは、監督の作品『JFK』へとつながり、もし彼が暗殺されなければと考えさせられるものだ
ベトナム戦争を終結に導き、伝記映画まで作ったニクソンへの評価は辛い。ニクソン大統領とキッシンジャー大統領補佐官を、「狂人」と「サイコパス」のコンビに喩える
ニクソンはベトナムからの「名誉ある撤退」を果たすべく、北ベトナムへの北爆を続け、カンボジア、ラオスへと戦線を拡大した。これによりカンボジアではクメール・ルージュが伸張し、世紀の大虐殺を起こすこととなる。ニクソン政権が中国へ接近した際には、ポル・ポト政権とも友好関係を保ち、タイの外相にキッシンジャーは「われわれは友人だとカンボジアに伝えてくれ。たしかに人殺しのろくでもない連中だが、それが障害にはならない」とブラックジョークのようなコメントを残している
ニクソン政権はインドネシアのスカルノ政権、チリのアジェンデ政権へのクーデターにゴーサインを出し、アメリカの大企業を守る軍事独裁政権を樹立した。アメリカの帝国主義、ここに極まれりである
『皇帝のいない8月』という映画は、軍国主義の自衛隊に対しCIAが後援する筋なのだが、時代的に単なるフィクションに収まらない話だったと気づかされた。けっこう、洒落にならん……


前巻 『オリバー・ストーンの語るもうひとつのアメリカ史 1』

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