『琉球の風 雷雨の巻』 陳舜臣

大河ドラマよりずいぶん平和で、オリジナルキャラはみんな長生きします


琉球の風(三)雷雨の巻 (講談社文庫)
陳 舜臣
講談社
売り上げランキング: 282,398


王国の独立にこだわる謝名親方は、独立の歴史を消そうとする島津の申し出を蹴り、斬首された。明との交易に興味を持つ家康の配慮により、“大和”での尚寧王は朝鮮の大使と同等の待遇を受け、島津との関係も国王が家老相当ながら、表向きは独立国を装う複雑な体制となった。啓泰は国家の独立にこだわらず、貨殖(商業)によって琉球を富まそうと、謝汝烈鄭子竜らと手を組んで南海王国構想に乗る

最後の巻となって、だいぶ物語のペースが変わった
第1巻・第2巻は島津の琉球入りを時系列で追ったものだったが、最終巻では薩摩と琉球の関係が整理されていくなかで、明清交替と鄭一族の抵抗運動、大阪の陣の牢人とキリシタンたちの亡命、鎖国体制へ向かう幕府に、オランダとイギリスの新教国とスペイン・ポルトガルの旧教国の対立と、東アジア激動の数十年を雄大に追いかけていく
謝名親方は、琉球を以前から薩摩の従属国であったとする島津家に対し(朝鮮出兵の琉球分の費用を勝手に負担していた)、それを正当化する書状に署名せず、斬罪となる。作者は歴史を曲げない中国古来の史官の伝統に忠実であったと評価する。謝名親方は南京で士大夫としての教育を受けており、正統を重んじる朱子学的価値観に殉じたといえる
一方、主人公の啓泰は謝名親方の世代は国の独立にこだわりすぎたとして、王国の全盛期のように幅広い交易による商業振興を目指す。そのためにキリシタンや大阪の陣の牢人を取り込んで、鄭一族と組んでの倭寇(?)も辞さない
後半は村山等安の高砂遠征から、オランダの植民地統治、鄭成功の奪取半ば「台湾の風」となってしまうが(苦笑)、琉球伝来のサンシンが日本で三味線となったように、芸事と経済は国境を越えて、そこにいる人々を豊かにしていく様子を伝えている

琉球入りによって、薩摩と琉球の関係はどうなったのだろうか
薩摩は琉球領であった奄美大島、喜界ヶ島、徳之島、沖永良部島、与論島を併呑。琉球の石高は12万3千石のうち、王府領として8万9千石が当てられた

王府より毎年、島津に対して、
 芭蕉布 三千反  上布 六千反
 下布 一万反  唐苧(麻の一種) 千三百斤
 綿 三貫目  棕櫚綱 百房
 黒綱 百房  筵 三千八百枚
 牛皮 二百枚
を上納する(p114-115)

さらに掟十五条として、対明貿易はすべての薩摩の指示によって行うこと、女房衆に知行を与えぬこと、私的主従関係の禁止、薩摩の許可のない商人の出入り禁止、人買いの禁止、規定以上の搾取は鹿児島に申し出ること、日本の度量衡を用いること、三司官の権威を重んじることとし、原則としては厳しく内政干渉できた
ただし、対明、対清の交易の関係上、表向きは琉球の独立色を守ったほうが薩摩の国益になるとして、文化面では琉球の独自色を守るように働きかけた。大河ドラマでは、主人公の弟・啓山(=渡部篤郎)が琉球独自の踊りをこだわって死ぬ展開になったが、そこまで極端な弾圧はなかったようだ
明清交替時には、鄭一族の影響で清への慶賀使が送れず、清の康熙帝に献上する金壷が海賊に奪われる事件が起きて、薩摩の意向で大使や三司官が処刑される事態が起きている。琉球独自の伝統は、薩摩の都合で維持されたものでもあるのだ

ちなみにちょいと調べたところ、『テンペスト』で描かれたような琉球王朝の官吏登用試験は、1800年代中葉に中国帰りの祭温が導入したものに過ぎず、幕末の動乱に間に合わなかった
謝名親方が南京で勉強したように中国へ留学するのが、学問で身を立てる王道で久米村出身者がその役割を担った
あの小説はかなりファンタジーであり、どちらかといえば本作のように封建制ぽいのが琉球王国の実体に近そうだ


前巻 『琉球の風 疾風の巻』

関連記事 『テンペスト』 第1巻・第2巻
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