『琉球の風 怒濤の巻』 陳舜臣

単行本には顔写真つきの人物一覧がつく。みんな、若い!


琉球の風(一)怒濤の巻 (講談社文庫)
陳 舜臣
講談社
売り上げランキング: 366,449


17世紀初頭の琉球。尚寧王が治める琉球王国に対して、薩摩の侵攻が迫っていた。中国からの渡来人を祖先とする久米村では、出身の謝名親方が王国の宰相である三司官に就任。薩摩に対抗すべく、宗主国の明国や江戸幕府に対して接触をはかる。幼い頃に父を亡くし、親方の世話になっている啓泰は、拳法の師・震天風とともに明国の福建へ渡る

琉球王国を舞台にした1993年大河ドラマの原作小説
帯には20年来、温めてきた構想とあるが、小説の初出がその前年なことから、直接的にはドラマ化を前提とした作品のようだ
ただし上巻まで読んだところ、ドラマ化前提の縛りがあるからか、ストーリーが締まっていて展開が早い。薩摩の侵攻が数年後とタイムリミットがあって、軍事力のない琉球王国は、明国や“大和”の人脈を頼って抑止力を得ようとする
上巻の山場は、尚寧王の即位を承認する柵封使の到来であり、その形式や手続き、歓迎の宴などがこと細かく描かれる。琉球王国では人材難から、久米村三十六姓の補充を申請する。この頃の琉球は交易国家としては衰退し、ポルトガルやスペインら欧州勢との競争に敗れ、明朝に柵封を申請する使者が難破する体たらくだった
その一方で、攻め込む薩摩側の都合にも触れられ、関ヶ原の敗戦から義弘、義久、忠恒の三つ巴の緊張、士族を養うための財政難があり、徳川家としても大阪の豊臣家が健在なうちは、琉球攻めをネタに薩摩を懐柔したい
後半には出番の少ない主人公・啓泰の、死んだはずの父親が薩摩で生きていることも発覚し、いよいよ島津が動き出す。次巻こそが怒濤の予感

久米村三十六姓は、明の洪武帝が1392年に送り込んだ職能集団とされる
琉球に在住しながら籍を明国に置く特殊性から、久米村出身者はあまり高い役職につけなかったが、謝名親方(謝名利山)ははじめて三司官(三人いる宰相の一人)となった
史実だと同僚を讒言して百姓身分に落とし、その身分を奪ったとされるが、小説では高潔な人物として描かれている
主人公の啓泰(ドラマでは東山紀之)も久米村出身で、謝名親方の頼みで先の柵封使の副官である謝杰の息子、謝汝烈に会う。薩摩の侵攻に対し、明国の援助を受けられないかと打診するも、強烈なやり取りが展開される
まず謝汝烈は、「薩摩に支配されて、琉球の民が損をするのか」と聞くのだ。もし民の暮らしが楽になるのなら、亡国は歓迎すべきこととまで言う
明国は万暦帝が政治に倦み、東北部では腐敗した将軍・李成梁を利用して、ヌルハチが女真族を統一していた。謝汝烈は琉球を救うどころではなく、進んで亡国させる段階に入ったとする
そして、話は明国創建にまで遡る。明の太祖・朱元璋はモンゴルの元朝のみならず、新王朝のライバルとなった陳友諒とその水軍を大弾圧。王朝成立後には、「胡藍の獄」と呼ばれる大粛清で功臣たちとその一族を殺戮した。福建においては、有力者である蒲寿庚の一族をかつて宋を裏切ったとして官職につくことを禁じた
そうした「海の民」に対する弾圧は、明朝に対する深い恨みを残し、遠く離れた子孫にも影響を与えるのだ
謝汝烈は明国の滅亡を前提として、独自の勢力を作ろうとする。それは大陸を支配する新王朝ではなく、海を中心とした「南海王国」!
何か鄭成功の小説に似てきたが、華僑出身の作家としてこだわりたい構想なのだろう


次巻 『琉球の風 疾風の巻』

関連記事 『旋風に告げよ』
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

コメント

No title
どうも、以蔵さん
琉球の風、なつかしいですね~
はるか昔にNHK大河で見たのを思い出しました。
まあ、あまり、視聴率は取れなかったみたいですけどね。
昔は、あまり深く考えずに見てたけど、結構、深い内容のドラマだったのですね。
最近、沖縄に行くことがあり、沖縄の歴史に触れる機会が多かったので、考えさせられること多しです。
Re: No title
これはタヌキおやじさん、こんばんわ
『テンペスト』を読んでから、琉球王国のことが気になったので、探して読んでみました
NHK大河は、首里城が復元されて沖縄振興をかねてのものぽいですねえ。ドラマの内容に関しては、薩摩侵攻のドンパチが収まると、どうしても地味になってしまった印象です
大河の舞台には、いい意味でふさわしくない場所なのかも

コメントの投稿

非公開コメント


(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
カテゴリ
SF (25)
RSSリンクの表示
リンク
FC2 Blog Ranking
ランキング
アクセスアップ!?
検索フォーム
はてな
この日記のはてなブックマーク数
タグランキング

サイドバー背後固定表示サンプル

サイドバーの背後(下部)に固定表示して、スペースを有効活用できます。(ie6は非対応で固定されません。)

広告を固定表示させる場合、それぞれの規約に抵触しないようご注意ください。

テンプレートを編集すれば、この文章を消去できます。