『旋風に告げよ』 陳舜臣

鄭芝竜を主役にした作品もあるようで


鄭成功―旋風に告げよ〈上〉 (中公文庫)
陳 舜臣
中央公論新社
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鄭成功―旋風に告げよ〈下〉 (中公文庫)
陳 舜臣
中央公論新社
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絵を学びに、明から渡来した逸然和尚を訪ねた林統太郎は、「統雲」という名をもらった帰り賊に襲われる。吉井多聞という医者に辛くも窮地を救われ、匿ってもらったクリスチャンのお蘭から、統太郎とお蘭が姉弟であること、親が福建の海賊・顔思斉であることを教わる。福建では顔思斉は死に、鄭一族が台頭して鄭芝竜が海を仕切っていた。鄭芝竜とその子鄭成功は南方に逃れてきた明の皇族を保護し、明朝の復興をかけた戦いを始める

日本では“国姓爺”で有名な鄭成功の物語
国姓爺“国姓”とは、亡命してきた皇族の一人、隆武帝から皇族のみに許される朱姓を賜ったことで、“爺”は老人ではなく日本語の「旦那」に近い意味を持つ。娘がいたら嫁がせたいと、平時なら破格の待遇を20代の青年に与えたられたのだ
本書の物語はオリジナルキャラクターである林統太郎の視点に始まり、鄭成功の獅子奮迅の戦いと、父・顔思斉の不審な死とその財宝を巡るミステリーが絡められる。が、史実の鄭成功を追うだけで話が煮詰まってしまったのか(苦笑)、途中で顔思斉関連はフェードアウト。みんなで仲良く台湾からオランダの東インド会社を追い出して、大団円を迎えた
ミステリーとしては失敗したものの、日本人と中国人が雑居していた時代の長崎、北京が落とされてからの明の亡命政権のありさま、など貴重な歴史風景が広がり、鄭成功があえて逆境の明に肩入れした理由が解き明かされている

鄭成功の父、鄭芝竜は亡命政権への応援を決めたものの、打算ありきのものだった。単に清朝に降りて大陸がすんなり統一されてしまったら、鄭一族の海上覇権が認められるか分からない
表向きは明朝を支持して、鄭一族の協力なしに統一できないという具合にすれば、一番恩に着せることができる。また、北方の満州人が南方をそのまま治められるかは未知数で、明清が南北を分ける可能性も視野に入れていた
それに対して鄭成功は、一族の後継者として南京で高等教育を受けており、父のような商売人より士大夫としての倫理性が植え付けられていた。そのため、戦いの途中で清に寝返ろうとする父に歯向かい、明朝復興の戦いを続行する
鄭成功には母親が日本人であるという弱みがあり、鄭一族を仕切るにはより中国人らしく振舞わなくてはならないという強迫観念もあった
地図上の支配領域を比べると無謀な戦いに思えるが、満州族の将軍が水戦にまったく不得手であり、清軍は投降した中国人の将軍に依存せざる得ないこと、辮髪を強要したばかりで人心が動揺していたことなど、清側にも不安要素が多く鄭成功は南京まで快進撃を続けることができた
しかし、補給線上に敵の砦を残したこと、速攻を企図しながら長期戦に方針転換したことなど、鄭成功の決断が裏目にでて南京奪還の夢は断たれることとなる

明朝末期の台湾はスペインとオランダの東インド会社によって支配されていた
オランダの東インド会社は、明朝との戦いに勝利し入植すると、高山族(日本でいう高砂族)と棲み分けしつつ、中国本土から移民を呼び寄せ農耕に取り組ませる
東インド会社の重税に苦しんだ移民者たちは、1652年に郭懐一をリーダーに反乱を起こすが失敗し、一万人以上の移民者が殺されてしまうのだった
南京攻略に失敗した鄭成功は、清側の「遷界令」、福建などの沿岸から30里を無人の地とする政策による大打撃を受けて、新たな戦略拠点を得るべく台湾へ目をつける
遠洋航海できるガレオン船に苦戦するものの、上陸後は移民者の協力を得てゼーランディア城を包囲。最強の船ヘクトル号を沈め、東インド会社を降伏に追い込んだ(1661年)
翌年に鄭成功は39歳で死去。鄭一族の政権は20年続き、清王朝に投降する
鄭成功の明朝復興は失敗に終わったが、初めて台湾独自の政権を建てたことから今日でも開発始祖と称えられているそうだ
鄭親子は江戸幕府の日本に度々軍事支援を要請していて断られていたが、その生き様は近松門左衛門の人形浄瑠璃『国姓爺合戦』により同時代の庶民にも知られていた
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