『恐怖の都・ロンドン』 スティーブ・ジョーンズ

これがイギリスの19世紀か


恐怖の都・ロンドン (ちくま文庫)
スティーブ・ジョーンズ
筑摩書房
売り上げランキング: 620,065


猟奇殺人、ロンドン塔の陰謀、地獄の監獄……中世から近代に繰り広げられたロンドンの暗黒を紹介する
本書はロンドンの観光ガイドブックとして企画されたもので、それも殺人現場巡りバスツアー」の記念品!
切り裂きジャックゆかりの居酒屋が「ジャック・ザ・リッパー」に店名を変えたりと、ロンドンでは殺人事件や幽霊が観光名所になってしまうらしい(苦笑)。さすがモンティ・パイソンが生まれた国である
ガイドブックゆえに細かいネタが並べれた形式になっているものの、印象深い挿絵や惨劇を淡々と描く文章のおかげで、普通に優れたエッセイとして読めてしまう
王朝の華やかな歴史、世界に先駆けた産業革命と議会政治の下には、かくのごとき悲惨な底辺生活者がうごめいていた。近代の訪れとともに、生活条件が良くなったように勘違いしがちだが、現代の豊かさが普遍化したのは、先進国ですらごく最近のことなのだ

中世都市の不潔さは良く知られるが、ロンドンもその例に漏れない
排泄物を川に垂れ流し、その水を飲み水に使用する始末で、有名なペスト大流行(1664~1665年)以前にも、疫病が頻発していた。公衆便所ができたのは、1852年のことである
ペストが流行ると、死人を出した家族は家のなかに隔離され、40日間出られなかった。さらに一人死ぬと、そこから40日間という念の入れようである
医者は患者の家に訪れるとき、感染を防ぐために長いクチバシを着用し、悪臭をかがないためにクチバシ部分にハーブを入れていたという
当時の医学で治せるわけもなく、ネコやイヌを殺せという愚かな布告により感染源のネズミが増えまくり、路上に死体が散乱するという『復活の日』さながらの地獄絵図となった
1665年の大流行に蹴りをつけたのは、同年にあったロンドン大火」で炎に焼き尽くされることで沈静化したという
とはいえ、根本的に環境が良くなったわけではなく、19世紀中ごろまでのスラム街イーストエンドでは売春や人身売買が横行し、人々は悲惨な環境で過ごしていたのだ

一般庶民がそういう生活なら、囚人はその上を行く
債務者が投獄(!)されるフリート監獄では、その罪状に相応しく全てが金次第。賄賂で一定期間、娑婆に出ることもできた。その代わり、金のない者にとっては地獄で、獄中死も常態化していた。まさにリアル帝愛である
イギリスのバスティーユといわれるフリーゲイト監獄では、もう一つの社会が形成されていて、金のある著名人は一日、酒を飲んで世間話をして過ごす。所内で金を稼ぐ術を見つけられれば、良質の環境を確保することができた
しかし、一般の囚人は監獄の入り口で衣服を含めた全ての持ち物を奪われ、劣悪な環境を強いられて、大半は獄中で死ぬか処刑場に旅立つかどちらかだった
ロンドンへの人口流入から監獄がパンク寸前となり、囚人を植民地へ移民させる政策が取られる。最初はアメリカだったが、合衆国が独立するとオーストラリアへ矛先は向かう。人員を確保するために、軽い窃盗などの微罪でも流刑者となった
この宗主国の勝手に、フランクリン・ベンジャミンは「本国で吊るせ」と抗議の声を上げている

死刑が乱発されたのも、更生という概念がないのと、監獄の費用を浮かしたいゆえ。処刑は一般民衆にとってお祭りにもなっていて、群衆は死刑を手伝ったり、死者の死体をご利益に触ったりした
死刑執行人は処刑を演出するダークヒーローである反面、悲運の罪人を殺す際には恨まれる立場にもあった
死刑執行人は1686年から「ジャック・ケッチ」の名で呼ばれるようになったが、最初のジャック・ケッチは三回、斧を振り下ろしても貴族の受刑者を絶命させることができず、最後はナイフで切断した
この始末に群衆は怒り狂い、このケッチは更迭されてしまったという。ギロチンが必要とされたのも、執行人の人材の問題があったようだ
処刑後には犯罪者の死体を解体し、それを晒して宴会を開くとか、とんでもない光景が繰り広げられていて、切り裂きジャックやスウィニー・トッドが出てもなんら不思議でない社会なのだ
本書は現代の殺人事件まで触れているが、19世紀までの凄まじさに比べるとずいぶんと平和的。犯罪者もドジな凡夫が多い


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