『王妃の離婚』 佐藤賢一

中世フランス的ハードボイルド……か?


王妃の離婚 (集英社文庫)
佐藤 賢一
集英社
売り上げランキング: 12,825


1498年フランス。フランス国王ルイ12世は、王妃ジャンヌに対して異例ともいえる離婚訴訟を起こしていた。ローマ教会による特別法廷での裁判は、国王の断然有利に傾いていたが、ある中年弁護士が王妃側に加わることで形勢が逆転する。その男、フランソワ・ベトゥーラスは、かつてパリ大学法学部で知られた秀才であり、先々代のフランス王の逆鱗に触れ中退した過去があった

直木賞作品だが……良くも悪くも、この作者らしい作品だった(苦笑)
離婚を認めないカトリックの建前から、「性行為がなかったから夫婦とはいえない」「性的不能だから結婚の目的にそぐわない」と離婚に理屈をつけることから始まって、行為がなされていない証拠の処女検査、性的不能を確認するための男根検査まで発展する当時の離婚裁判の様子が見事に活写されている
神学部の学生たちの喧騒、ルイ11世から続く王族たちの因縁、王と王妃を守るスコットランド近衛兵と、中世フランスを再現した作品世界は素晴らしい
が、肝心のストーリーはというと、クライマックスに向かって盛り下がってしまう
フランソワは油断した低脳の検事たち相手に華々しくデビューしたならば、中盤以降は相手のレベルを上げてより質の高い攻防を期待したいところ。それがルイ12世がとことんダメな優男と描かれるなど、尻つぼみになっていくのだ
それのみか、相手の男が下がるのに合わせて、フランソワの恥部が暴露されるというよく分からない展開で、慰められるだけ主人公の男が立つとか……
これだけの文章力が書けるのに、どうしてこうなった。編集者は何か意見しなかったのだろうか

ルイ12世の離婚裁判には、教皇庁が暗躍していた。時の教皇は悪名高いのロドリゴ・ボルジア、アレクサンドル6世
国王の離婚を実現するために、教皇の結婚無効の認可状をチェーザレ・ボルジアが携えてフランスに入っており、小説でも名前だけは出てくる
ルイ12世の狙いはブルターニュ公国のアンヌとの結婚し、ブルターニュの地を手にすること。ブルターニュはケルト文化が残る異郷であり、海上交通の要所であることから、外国の干渉を受けやすい土地でもあった。百年戦争期には独自の地位を保っており、正式に公国が解体されたのはなんとフランス革命後だった
小説内で暴君といわれるルイ11世は、国内の諸侯に睨みを利かせたからで、戦争より外交・策略でフランスの中央集権体制を進めたと評価されているようだ
むしろ、その子のシャルル10世はイタリア戦争を起こした戦争屋。ルイ12世はシャルルに対する謀反の罪で投獄されていて、先代のほうが怖かったことだろう
ルイ12世は先王の戦略を反省してか、教皇庁と結んでミラノを落とし、ナポリに手を伸ばすが、ボルジア家が没落して再びイタリアの地をたたき出されることとなった
まあ、小説で書かれているほど、悪い王様には見えない


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