あさま山荘事件で有名な連合赤軍の活動家たちの軌跡を描く山本直樹の作品
実在の新左翼運動家をリアルに描きつつも、各方面への配慮からか苗字を地名に変えたり、大学の名前を伏せたり、新聞が黒塗りだったりとフィクションであることを強調している
物語は1969年1月18日の東大安田講堂へ機動隊が突入した事件から始まる
安田講堂の影響で青森県○○大学(弘前大学なんだけど)でも、学生による大学の自治を目指して校舎を占拠する事件が勃発。理学部にいた岩木泰広(=植垣康広)もバリスト(バリケードストライキ)に参加した
○○大学の文学部には、安彦良和をモデルとする安田がいて、活動のジリ貧からバリストの自主解除を訴えていた。大学への活動に限界を感じた学生たちの一部は、過激な武装闘争へと流れて行く。岩木も荒船(=梅内恒夫)にオルグされ、武闘派の赤色軍(=共産主義者同盟赤軍派)に加わるのだ
なんで学生や活動家が無謀な武装闘争へ流れたかは、第1巻では説明されない
そもそも「説明」という要素が少なくて、流れるような淡々な描写が続き、まったく知らない人間には良く分からないかもしれない
時代背景として、活動家たちが観にいく高倉健のヤクザ映画(『唐獅子牡丹』)、アポロ11号、サイモン&ガーファンクル、大阪万博、三島由紀夫の割腹自殺が描かれるが、特に関連付けて語られるわけでもない。考えるより「感じろ」という突き放しである
あるいは「そういう時代だった」というフォローを排除し、彼らが実際にやったことを抽出する意図なのかもしれない
突き放しは実在をモデルにした登場人物たちにも徹底しており、主要メンバーには番号が割り振られていて、その順番どおりに終末を迎えて行く。各話の最後には、ご丁寧にもそれぞれ「死刑確定まで○○○日」とかカウントダウンが告知されて、活動家視点の必死さを相対化している
第1巻では、ヒロイン格の赤城洋子(=永田洋子)が所属する革命者連盟(モデルは日本共産党(革命左派)神奈川県委員会。日本共産党は一切関係なかったらしい!)が、よど号ハイジャック事件に刺激され、投獄中のリーダー・筑波(=川島豪)の奪還作戦を開始。警官の拳銃を狙って交番を襲撃したところ、番号①を冠していた赤石一郎(=柴野春彦)が射殺され、最初の死亡フラグが回収された
赤石の一件を感心した赤色軍は革命者連盟に接触し、「連合赤軍」へとつながっていく
次巻 『レッド』 第2巻
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