『さらば愛しき女よ』 レイモンド・チャンドラー

暗黒時代のロス


さらば愛しき女よ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-2))
レイモンド・チャンドラー
早川書房
売り上げランキング: 67,375


黒人の店に大男が殴りこんだ。私立探偵マーロウは、“大鹿”マロイの起こした殺傷事件に巻き込まれて、警察の取調べを受けることに。担当者から協力を依頼されたマーロウは大男が探す恋人ヴェルマを求めて、店の前の持ち主ジェシー・フロリアンに会うが、別件で宝石泥棒との交渉に巻き込まれ、ロスの闇の紳士たちに翻弄されていく……

枝葉が凝りすぎたミステリーだった(苦笑)
冒頭は出所したばかりの“大鹿”マロイが引き起こす事件に巻き込まれ、それに右往左往するものの、それとまったく関係なさそうな(読者はそう思わないわけだけど)宝石専門の盗賊団との交渉に立会い、これまた殺人事件に発展!
その後は交渉の依頼人の遺品から、麻薬関係の事案に関わって文字通りのフルボッコ(!)となり、絶体絶命のピンチに追い込まれる
そうなると、麻薬関係と宝石泥棒とが黒幕に絡んで……と思うところが、これがまったくのフェイクという(笑)
そして、真相は表題から連想されるような結末をたどる。大筋がパターンだからこそ、ここまでの陽動をかける必要があったのだろう
マーロウとともに読者も疲労困憊しながら、たどりつくのが陳腐な現実というのは、それはそれでリアルを感じた

本作では様々な悪党に触れ、酷い目に合わされる。しかし、自ら鉄拳制裁に乗り出す展開にはならない
宝石泥棒にしろ、麻薬関係にしろ、詐欺師にしろ、それぞれに悪の秩序が成立していて、それをかき乱さないように腐敗した警察と行政、市長を当選させる暗黒街の主が君臨している
マーロウを締め上げた警官の口から、「警官一人一人が堕落しているのではない。堕落させる構造があるのだ」と語られる。言い訳に聞こえるが、警官が上の命令に従わざる得ない以上、腐敗した秩序に組み込まざる得ないというわけだ
作品が書かれた1940年は、後年“マフィア”と呼ばれる犯罪組織が行政にしっかり食い込んでもみ消せる時代。アル・カポネは例外的に挙げられたからこそ、有名になった
マーロウは暗黒街の主とある種の手打ちをすることで、事件を収拾させる。巨悪に触れず、あくまでやれる範囲で解決するしかない。戦前のロスの魔境ぶりを感じさせる作品である
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