『赤朽葉家の伝説』 桜庭一樹

たしかに代表作


赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)
桜庭 一樹
東京創元社
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神秘な伝説の残る伯耆の国。“山の民”に置き去りされた赤子は、だんだんに住む若夫婦に引き取られ、万葉と名づけられた。人の死が分かる千里眼の持ち主である万葉は、この地を代表する旧家・赤朽葉家の大奥様に見込まれ、跡取り息子・曜司の嫁となる。万葉は伝説のレディース&漫画家として有名になる毛毬を生み、毛毬はわたし、瞳子を生んだ

ポップな女三代記
旧家に嫁いだ“千里眼奥様”万葉最強のスケ番・売れっ子漫画家となる毛毬なんでもないその娘・瞳子の三部構成の三代記となっているが、瞳子の部は万葉の過去を探索する内容なので、実質的なヒロインは万葉
赤朽葉家は伝統のたたら場から始まった製鉄業の一族で、戦後はドイツの溶鉱炉を取り入れて業績を拡大し、街ともに繁栄を極める。第一部では激動の時代を描きながら、万葉とそれに関わる人々の哀歓を描いている
第二部はガキのころは手のつけられないスケ番、大人になっては自身の青春をネタにした漫画一世風靡した毛毬の破天荒な人生が描かれる。のどかな万葉編と比べると、その嘘のような結末に笑ってしまった(苦笑)
毛毬編は百夜との因縁を消化できなくて、無理矢理畳んでしまった感がある。が、面白いことは面白い

第三部の瞳子編は、万葉が今わの際に残した言葉から、その千里眼で死を予見された人々を再調査する内容となっている
万葉や毛毬と違い、瞳子はほんとうに平凡でモラトリアムな女の子。腐れ縁のように付き合う彼氏とゆるい関係を保ちつつ、嫌になった会社をあっさり辞めたりとふわふわしている。絶えず疾走した毛毬とは隔絶していて、その世代の感覚の違いを表現されているのには感心した
この三代記の書き手は瞳子とされている。正直、作品内での社会変化の説明は教科書的で、鳥取が平均的に社会の波に揉まれている印象なのに違和感を覚えたが、瞳子が適当な資料から類推したとすると納得がいった(苦笑)
瞳子にはそのまま作者が投影されていて、昔のことをファンタジーにしか思えない時代の断絶が正直に告白されているかのようだ。それでも各部ごとの時代のリズムが描き分けられていて、軽快さと重厚さを兼ね備えた良作といえよう

巻末のあとがきには、製作にいたった経緯が詳しく語られていた
編集者に「初期の代表作を書いて欲しい」と焚き付けられ、『百年の孤独』などの具体的な著作を参考例に、プロットにまで意見が加えられていく(第二部は特にそうらしい)。毛毬編で語られるように、作家が編集者に誘導されて成長していく、作品が作られていくプロセスが赤裸々に告白されている
作品への神秘性が奪われるような微妙な部分はあるものの、自己言及に及んでしまうのが現代の作家の習性らしい


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